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□13.
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「セラフィナ!」


俺の声にはっと顔を上げたセラフィナは、少しだけ顔を歪ませた。


「…リンク」


「シェンくんも、お母さんとお父さんが捜してるよ。
とりあえず広場まで戻ろうか」


俺は二人に近づいて手を差し伸べた。


セラフィナは少し迷った挙げ句俺の手を掴んで立ち上がり、同時にシェンくんを立ち上がらせた。


「シェンくん、お父さんとお母さん探してるって。
行こう、ね?」


「うん…」


半べそかいているシェンくんは泣くまいと唇を噛み締めていた。


セラフィナもほっと安心したような顔ををして、路地を抜けて行った。


俺も二人の後に続いて路地を抜け、シェンくんを挟むようにしてセラフィナと並んだ。


さぁ、広場までもうすぐ。


これでやっと長かった一日が終わるというものだ。




広場の真ん中…噴水の辺りにやっぱりヘレンさんとラークさんがいた。


まだシェンくんを探している様子だ。


「ママ!パパ!」


突然シェンくんがお父さんとお母さんを見つけたらしく、走って行く。


それに気づいたヘレンさんも同じようにシェンくんの方へ走って来た。


「ママ!」


「よかった!シェン!
どこに行ってたの?ママ心配したのよ?」


「シェン…よかった…」


ラークさんもほっとした表情で抱き合う妻と息子の元に駆け寄った。


俺たちも3人の元へ向かった。



「リンクくん、本当にありがとう!
なんてお礼を言ったら良いやら…本当に…」


ラークさんが優しく微笑んで礼を述べた。


「俺は何もしてないですよ。
セラフィナがシェンくんとずっと一緒にいてくれてたみたいで…」


「そちらのお嬢さんがリンクくんの探していたセラフィナさんね」


「えっと…私はそのただシェンくんと一緒にいてただけで…」


「ううん、それだけでもありがたい。
城下にはいろんな輩がいるからな。危ない奴と一緒じゃなくてよかった!
ありがとう、セラフィナさん」


セラフィナは照れながらも会釈した。


「でも、リンクくんもセラフィナさんが見つかってよかったわね」


ヘレンさんの笑みに俺もつられて笑顔になった。


それにしても本当に良かった。


いずれにしても宿屋に帰ってくることは帰って来るだろうとは思っていたものの、騎士になることについても何も聞けていなかったし、何より俺が当初の約束をすっぽかしたわけだから、やっぱり申し訳なかったし、心配だった。


「またいつか必ずこの恩は返させてもらうよ」


ラークさんはそう言いつつ、シェンくんを肩車して、家族3人夕方の城下町に消えて行った。




「セラフィナ…ごめん」


「何が?」


「いや、その…
城門辺りで待ってるって言ったのにさ、その…いなかったから。
真っ先に結果を聞きたいって言ったくせに」


「いいよそれは…
あのね、リンク…その騎士になることなんだけど…」


言い淀むセラフィナに俺は聞きたくない気持ちで一杯になった。


結果が結果なら、セラフィナはこのままカナル村に帰らないことだってありうるし、帰ったとしてもそれは一時帰郷なだけですぐにまた城下に旅立って、そのまま騎士になってしまうかもしれない。


そうなれば会うことがこれまでよりずっとずっと難しくなってしまう。


お互いの家を行き来して休みの日の空いた時間をつぶしたり、仕事帰りによって一緒に晩ご飯を食べたり、一緒に森に散策に出かけることも、城下町に買い物に行ったり仕事に行ったりすることもなくなってしまう。


それが俺には辛く哀しいことだった。


「セラフィナ、その話は宿屋に戻ってからにしよう。
ここでそんな話なんてあんまりだろ」


「うん、そうね」


俺はセラフィナの話を遮り、宿屋で話をすることにして、とりあえず現実逃避した。


セラフィナと一緒にいられる時間を少しでものばそうと。


ただの悪あがきだ。




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