ボーダーライン
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普段の城の内部事情を知らない俺にとっては、”いつも”との違いは分からないが、どうやら何か慌ただしいようだ。
ノーラさんは少し落ち着き無さげだが、一方のゼルダ姫はというと相も変わらず落ち着いていらっしゃった。
さすが次期ハイラルを統べる人物なだけある。
「姫様、この様子では…」
「ごめんなさい、どうしてこんなに城内が慌ただしいのかしら?」
ノーラさんの軽いストップも何の其の、ゼルダ姫は慌てた様子で廊下を行く一兵士を呼び止めて訪ねた。
「はっ!ハイラル南部カナル村付近で何やら事件が発生したようです」
「事件ですか?」
「はっ!詳しいことは未だ分かりませんが、調査部隊が派遣されるとのことで…」
呼び止められた兵士は緊張した面持ちで顔が強ばっている。
無理もない。
雲の上の王女様直々に声をかけられているのだから。
本当なら俺もこうであるべきなのだが、セラフィナのこととカナル村付近で起こっているという事件のこと…さらにゼルダ姫とは2回目の対面と会話ということで緊張もそこそこだ。
ゼルダ姫は「ありがとうございます」と礼を述べると兵士を解放して仕事に戻らせた。
俺にとっては聞きたいことは山積みだが、俺が聞いたところでそう易々と教えてはくれないだろう。
ここは静かにしていることにこしたことはない。
「リンクさん!」
急にノーラさんが険しい顔でこちらに振り返って来た。
「これはやはり帰られた方がよろしいのではないでしょうか…?
セラフィナちゃんのことは気になるでしょうけれど…今は何やら緊急事態のようですし…」
少し言いにくそうなノーラさん。
俺に気を使ってくださっているんだろう。
「ノーラ、リンクさん。私に良い考えがあります」
すると、ゼルダ姫が俺とノーラさんに向き直って真面目な面持ちで切り出した。
「は、はい…」
あまりの真剣さに俺は思わずたじろいでしまう。
「姫様、何か良からぬことでもお考えになっておりませんよね…?」
一方のノーラさんは心配そうな面持ちだ。
「私はこれから事の内容を詳しく聞いてきます。
事情が分かり次第貴方達に遣いを送りますので、その遣いの言う通りに動いてください」
「姫様!また政に口をお出しになりますと陛下に言われますよ?!そもそも大目玉を食らうのは私なのですからね?!」
「今回は仕方がないでしょう。リンクさんの故郷のことなのですから。大丈夫、今度こそノーラには迷惑のかからないようにしますから」
「それは何度も聞きました!」
ふぅーっとあきらめたように溜息を吐いたノーラさんはついに「もうお好きになさってください」と完全に折れてしまった。
完全なゼルダ姫の勝利だった。
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