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□絶えず君を、
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顔なんて全然覚えていない、名前すらほとんど覚えていないような令嬢ばかり俺のまわりに集まる。
正直に言って、なまえじゃなかったらみんな同じなんだ。
あぁ、もちろんクロームとかは違うけど。
令嬢なんて顔も姿も物言いも全部同じ奴らの塊だとしか思えない俺がいる。

「ボンゴレ十代目、お久しぶりですなー」
「お久しぶりですね」
「最近のボンゴレの活躍ぶりには頭が下がる思いですよ」
「はは、そうですか。最近は落ち着いてますからね」
「えぇ、これもボンゴレのおかげだ」
「こちらのお嬢さんは?」
「私の娘ですよ。もしよければ…」

どこのボスかも忘れた男と話をしていたら、急にこの男の娘が現れた。
俺としては一つも触れずに去りたいが、前にそうしていたらリボーンからボンゴレの名が泣くぞと言われた。
だからしょうがなく声をかける。
けっして下心があるとか、愛人欲しさとかじゃない。
俺にはなまえだけいてくれさえすれば…

「おい、ツナ」

丁度良いタイミングとばかりにリボーンに声をかけられた。

「リボーン?どうした?」
「ちょっとおまえに会いたいっていうヤツがいるんだ。
俺としてもお前の婚約者候補にはうってつけのヤツだと思うがな」
「誰だよ」
「会えば分かる」

強引なリボーンにいわれ、指定された部屋に行けばやっぱりいたのは…

「あら!綱吉様!来てくださったんですね。
待っていましたの。ずっと…」
「貴方は?」
吐き気がする。
こんなやつら相手に平静を装える俺ももうどうかしてるんじゃないかと思った。
前は嫌悪しまくって会場から早々に帰ったこともあった。

「私アンリエット・エニオートと云いますの。
是非綱吉様とこうしてお話ししたくて…」
もじもじとする姿が実に鬱陶しい。
何でリボーンはこんなやつに俺を会わせたがったんだ?
俺が一番嫌っていて嫌がる相手だとあいつも分かってるはずなのに…
まさか、どこか有力マフィアの令嬢なのか?
俺は日頃あんまり令嬢とかの顔を覚えてないからどこのファミリーの人間か見当もつかない。
しかもこの状況…逃げるに逃げられない。
「そう、ですか」
「私、アンリエットは本当に綱吉様のことをお慕いしていますのよ?
私の父はあの… バンっ 何ですの?!」

急に扉が開かれた。
「悪いなアンリエット嬢。時間が来た」
「まだ約束のお時間では!」
「いや、もう無理だ。こっちの準備が整ったからな」
リボーンが盛大に入って来たことによって俺は救われた。
こんな令嬢の相手なんて悪寒がする。
「リボーン、なんなんだよ。準備って」
「来い、来たら分かる」

リボーンのあとを追ってまた広間へ戻った。



「リボーンさん!」
「おい、何で…」

広間に入ってすぐ俺の目に飛び込んで来たのは、


「嘘、だろ…

   なまえ…」


クリーム色の綺麗なドレスを着たなまえの姿が。

「なんでここに…?」
なまえが答える前にリボーンが口を開いた。
「このあいだ日本に行ったときの手みやげだ。
ありがたく受け取れ」
「…リボーン」

俺は心の中でリボーンに礼を言ってから、なまえの方へ歩み寄った。



「なまえ…」
「ツナ」

彼女が目に一杯涙を溜めてるのを見て、俺は不謹慎だけどほっとしてしまった。
その涙の意味が俺に会えた嬉しさだと思ったから。
自惚れるななんて言われそうだけど。
何故か分かった。


「ツ、ナ…なんで…なんで!
なんで別れるなんて…私いくらでも待ったよ?!
離れてても、それでも良かったのに!」
顔を手で覆って泣くなまえを俺は優しく抱きしめた。
いや、それしかできなかったんだ。
「ごめん…ごめん、なまえ。
あのときは俺と一緒にいない方がいいと思って、なまえを傷つけたくはなかった。
でも俺は結果的になまえを傷つけた。
その涙…俺に会えたうれし泣きだって自惚れてもいい?」
「…!」
「そうであってほしいなぁ。
自分から別れを切り出したくせに、まだなまえが好きなんだ。
ホント虫がよすぎるよな…
でも、それでも諦めきれないんだ。好きなんだ。
愛してる…なまえ」
「バカツナぁ!私だってずっと、ずっと…好きなんだから!
だから今だってこうやって…此処にいるの
もう、離さないで。お願い…おいて行かないで」
「うん…ずっと傍にいる。離さない。
…こっち、向いてなまえ」

そっと顔を上げたなまえ。
本当に何年ぶりだろう。
あんなにも遠くてこんなにも愛しい君が、今俺の腕の中にいる。
一度手放して、それでも好きで好きで、忘れられなくて。
なまえのためだと言い聞かして忘れようと必死になった。
それでもなまえの存在は大きくて、忘れるなんて到底無理だったんだ。



「ツナ…」


俺はそっと笑って、なまえの涙を指で拭う。
泣かないでと想いをこめて。

そして、
そっと唇を落とした。




そのキスは、
少ししょっぱくて甘い味でした。






絶えず君を、
(これからはずっと一緒に)
(歩いて行こうね)







fin.
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