Do you make me happy?
□ぷろろーぐ
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「長くはかからんよ。しばらく待って、わしがあのまがり角までいったら、ハンカチをふっておくれ。そうすれば、わしも元気が出よう」
「まーたその台詞を言ってるのね」
花柄のエプロンがよく似合う。
「だって好きなんだもん。ちゃんとやってね。そうじゃないと、私行かないから」
「ほんとにもう…」
ハンカチを取り出して広げ始める。
「だいたいどうして行かないといけない訳?」
「それは小春のためじゃない」
「はぁ〜?!」
「ほら、飛行機の時間に間に合わなくなるわよ」
「娘が一人で行くっていうのに、空港まで見送りにこな
い親がよく言うよ。ちゃんと時間は間に合うようにしてる」
私は荷物を持つと家の門を開ける。
「門をでたらもう”修行”なんだから」
「なにそれ。まるで”家に帰るまでが遠足ですよ”って言ってるのと変わらないじゃない」
私は溜息を吐く。
こういう親を持つと疲れる。
「じゃあ、行って来るね」
「いってらっしゃい」
私は足を進める。
まがり角まで行った時少しだけ振り返った。
ひらひらとふられているハンカチ。
「私がアリスになりたい」
ぼそりとでて来た言葉は虚しくも風の音に消されて行った。