short stories

□隣にあなた
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「ルリ港へ急ごう!」

エルザの声が聴こえてきた。


ルリ島は異邦のものの力を使いグルグ大陸に進行したが、異邦のものがルリ島の力を全て使い果たして進行を停止。
その後、グルグ族の要塞島がルリ島に接岸しグルグ族による反撃が繰り広げられ、ルリ島は地獄のような有様となっていた。

タシャはルリ島の騎士を連れてルリ港などのグルグ族との攻防が激しい地区へと向かって行った。
一方で私は住民の避難誘導にあたり、ルリ城下町内を駆け回っていた。

そんなときだった。
エルザの声が聴こえてきたのは。


「待て、ここは住民の避難誘導とタシャの救援の二手に別れるべきだ。」

金髪の男がエルザに言う。
あれは氷系の魔法を操るジャッカルというやつか。

「んーじゃあ、俺と…「私は住民の避難誘導に行きます!」おう、じゃあカナンと俺が避難誘導の方だな」

どうやら、エルザたちと共にカナン様もいらっしゃるようだ。

「タシャの方は頼んだぜ」

「あぁ!」

ジャッカルとカナン様は市街地の方へと走って行った。
残されたエルザを含む4人がタシャ救援に向かうこととなったらしい。

「行こう!」

「待て、私も行く!」

エルザたちが驚いたように私の方を振り返った。

「なんだよ、びっくりすんじゃねぇか」

「悪い。タシャの救援に行くんだな?」

「そうだけど、あんた持ち場離れて大丈夫なの?」

「これだけ混乱している。逃げ出した騎士も数知れず、なら、生きていて今もなお戦っている者を助けに行くべきだ。
それに、住民の避難は粗方終わっている」

「わかった、ナマエも一緒に行こう!」

タシャが認めた男、エルザとその仲間たちと共に私もルリ港へ向かうこととなった。





「待ち伏せ?!」



ルリ港にやっと出て来れたと思った矢先、物陰から突如としてグルグ族が現れた。
屋根の上から遠距離攻撃を仕掛けてくるかと思えば刀を持ったグルグ兵が攻めてくる。
確実に地形を利用した陣形を組んでいた。

「ヤバイな、この港は手遅れかもしれないぜ」


「見て!船の上!」

「やつらどんどん降りてくるぞ!」

「こっちに来る!」


エルザはボーガンで、ユーリスは魔法で屋根の上のグルグ族を狙い撃ちしていく。

私は炎系の魔法を操るユーリスや、エルザの援護をすべく剣を抜いて構えた。
グルグ族は……1体、2体、3体…10体ぐらいだろうか。

私もグルグ族に応戦しつつ、エルザやユーリスの援護に回った。

相手のグルグ族もやはりそれなりの実力者ではあるが、こちらの勢いを止めることはできない。
救世主エルザはもちろんのこと、このユーリスという男もなかなかの手練れ。
炎の魔法を自在に操るその力は凄まじい。


「よし、片付いたな。先に進もう!」

エルザの声が響いた。



エルザの仲間たちが次々と先に進んでいく。
私も置いて行かれないように後に続いた。


沖の方からグルグ艦隊がルリ港に入ってくるのが見える。速く行かなければタシャがもたない。



「うわぁっ!ひぃっ!」

情けない声が聞こえた。


あれは、ルリ島の騎士。
敵を前に逃げ出すなんて…
騎士たちを叱責しようかと思ったが、こちらは今それどころではない。下手すればタシャの命に関わってしまうかもしれないのだ。
一刻一秒を争う。


「同じ騎士としては不甲斐ないばかりだ」

「そんなことはありませんわ。
ナマエさんは私たちと一緒にタシャさんを助けに行こうとしています。敵前逃亡する騎士とは大違いですわ」

マナミアがにこりと笑ってそんなことはないと否定してくれた。


「上から来るぞ!」

その声に空を見上げれば、大きな鳥のような怪物…はたまた機械か…に乗ったグルグ族がこちらに向かってボウガンを打って来る。
これでは狙い撃ちだ。

「くそっ!ガーゴイルか!応戦しようにも上空から狙われてるんじゃ…!」



「エルザ殿!加勢いたす!」

先ほど敵前逃亡した騎士の一人がボウガンを構えて戻ってきた。

勇ましく声をあげて、ボウガンでガーゴイル一体を撃ち落とした。
それまでの頼りない情けない声を出していた騎士とは思えないほどの勇姿に私は嘆息した。

腐ったルリ騎士の中にもこういうやるときはやる奴がまだ残っているということ。
それだけでまだ騎士も捨てたものじゃないのだと思える。


しかし、上空からの攻撃は凄まじく一体落としたぐらいでは此方の不利は覆らない。
ルリ騎士は最期に勇ましい姿を見せて散って逝った。
エルザがルリ騎士の側へ走って行く。だが、きっと彼の命運はここで尽きるのだろう。



私たちもうかうかしてられない。
一刻も早く私はタシャの救援に向かわなければ…!



約束したんだ。
互いに何があっても死なないと。




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