夢物語【中編】

□EDEN〜君がいない〜
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俺は今、この3ヶ月を物凄く後悔した。

愛してた女に裏切られるなんて思ってもいなかった。

女ってのは嘘吐きな生きモンなんだな。
そーいやサッチもそんな事言ってた。

「エースにはまだ分かんねえかもしれねぇけど…女ってのはしたたかで、嘘吐きな生き物なんだよ」

あぁ。やっと解ったよ。

「ま、良い意味でも悪い意味でもだけどな?穿き違えんじゃねーぞ」

良い意味なんかあるか。嘘吐きに。

俺はオヤジに土下座までして、アイツを…アサミを船に乗せて貰おうとしてたんだ。

それなのに…。

「エースどうしたよい?」

急いで歩いてたせいか、何時もよりも早くモビーに着いていた。

「何がだよ?」

「眉間の皺。やべぇよい」

「…」

「そーいやオヤジが呼んでたぜい?帰ってきたら直ぐ通せってよい」

「…ありがとよ」

本当なら今日、アサミを連れて戻るはずだった。
オヤジが直々にアサミを見て決めたいと言ったからだ。

…もうその必要もねぇけどな。

「オヤジ入るぞ?」

扉を開ければ、穏やかな顔で座るオヤジが此方を見ていた。

「おうエース…。嫁はどうした?」

「もういいんだ…」

オヤジはそれから何も聞かなかったが、俺の頭を撫でて「馬鹿やろう」とだけ言った。

オヤジに頭を撫でられてから、不思議と苛つきと憎しみが消えたような気がした。
部屋を出ようとする俺に、オヤジは最後に言葉を浴びせた。

「テメェの惚れた女の嘘は…赦してやるのが男だぞ」

オヤジが何故嘘を吐かれたと解ったのかは謎だったが、その言葉がヤケに胸に引っかかった。

あと一週間。
そうすればこの島ともお別れだ。
それでスッキリできると思えばなんて事はない。そう自分自身に言い聞かせた。


だが、思ったより一週間は長かった。


出航三日前。
サッチとマルコに誘われて、酒場に足を運んだ。
俺は今までにないぐらい飲んで、ベロベロに酔っていた。

「…って言うわけでよー俺は遊ばれてたワケだ。笑っちまうぜ…そんな女を嫁にしたいと思ったなんてよー」

「エース辞めとけ。お前飲み過ぎだぞ!?」

「女にフられてやけ酒とは…みっともねぇ男だよい」

「うっせ…種馬扱いされた俺の気持ち解るかよ…うっぷ」
「そんな女には見えなかったけどなー…じゃあ今日は他の女でも抱きに行くか!!」

「辞めろいサッチ。煽るんじゃねぇよい」

「…そうだな」

もうアイツとは終わってんだし。陸ともあと三日でお別れ。
鬱憤晴らしに行くか…。

俺とサッチは、マルコを残して酒場を後にした。
そのあと、あのマルコが行動を起こすなんて思いもしなかった。

 
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