断片

□サヨナラfriend
1ページ/5ページ

その二人が出逢ったのは

ある春の日の事でした

暖かい陽射しと風に包まれて

たくさんの子供たちが笑っていたのに

その子は俯いていました



サヨナラfriend



「あの子つまんない!」
「もうほっとこうよ」
「行こ行こ!」

子供は時に残酷な事を言う。
つまんない、と言われた子は俯いたまま立ち尽くしていた。

何となく、その様子を眺める。
軈てその子は何か思い立ったように走り出した。
俺も追いかけてみる。

少女が止まったのは、綺麗な花が咲いている川の畔だった。
彼女は、俺には気付く事無く(当たり前だけど)花を摘み出した。
………何か呟きながら。

「…………さい………なさ…」

その言葉が気になり、聞き取ろうと後ろから近づく。
すると少女が突然俺の方を振り向いた。

「誰?」
「え」

見えてる?俺が??
……いや、そんな筈は無い。
こんな唯の子供なんかに、死神の俺が見えるはず無いんだ。

「キミ誰?」
「…………………」
「キミだよ、ボサボサの」
「しっ、失礼な奴だな!」
「あ、やっと無視止めてくれた」

何て事だ、完璧に見えてやがる。
死の臭いはしない………たまに居るんだよな、こういう人間。
厄介なものに関わってしまった。

「答えてよ、キミは誰?」
「死神だ」
「しにがみ?」

おうむ返しに尋ねてくる。
初めて聞いた様には見えなかったが、怯えた感じも無かった。

「死神さん、名前は無いの?」
「クリム」
「素敵な名前」
「おい、名前を尋ねたならお前も名乗れ」
「ボクはシエラ」

シエラ………嵐の女神か。
さて、ここまで関わってしまったなら仕方ない。
最後まで付き合ってやるか。

「ここで何をしてた?」
「お花、摘んでた」
「何のために?」
「お姉ちゃんに見せてあげるの」
「何をぶつぶつ言ってた?」
「謝ってたの、ごめんなさいって」

花に謝る子供なんて初めて見た。
その摘んだ花をお姉ちゃんに見せるって?
のんきな奴だ、謝るくらいならそんな理由で摘まなきゃ良いのに。

「ボク、もう帰るね」
「そう」
「ばいばいクリム」

そう言って、彼女は小走りで去っていった。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ