断片

□オヤスミmorning
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夜、眠る前。

そっと目を閉じて思うことは。



もう二度と目が醒めなければ、幸せなのに。







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大事なものは、肌身離さず持ち歩いていた。
悪戯されるから………結局は一緒だけど。

目を離したものは、全部被害にあう。
だからノートなんか取るだけ無駄だし、制服とか靴や鞄も買い直す気なんか更々起きない。
そんなの只の無駄遣いだ。

で、今日は傘だった。
雨が降っていたけど、こんな穴だらけじゃ仕方無い。
私はその傘を一応持って、雨の中を帰った。

走ったりなんかしない。
疲れるだけだから。
それに風邪引いたら学校行かなくて済む。


なんて考えてるときだった。
『彼』を見つけたのは…………

雨の中、冷たいベンチに横たわる少年。
目がまるで見えないほど長い茶髪。
近くには真っ黒なカンオケが置かれている。
そのカンオケと同じ位真っ黒な服を着ているのだ。

異様な光景、そうとしか言い様が無い。
けれど私はいつの間にか声をかけずにはいられなくなっていた。

「……ねぇ、貴方………どうしたの?」
「………………」

答えはない。
無視している感じではなかった。
ずっとそんな仕打ちを受けているから、何となく分かるのだ。

普段なら、というかこの子がこんなにも周りの世界から浮いていなければ。
このまま………いや、寧ろ初めから気にも止めずに通りすぎていただろう。

顔が同じ高さになるようにしゃがむと、激しい雨音に混じり、微かな呼吸音が聞こえた。
額にそっと触れてみると、熱がある事が直ぐに分かった。

私は、彼と彼の所有物であろうカンオケを持ち上げ、家に向かった。
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