断片

□ウラハラconduct
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「おいチビ!来るのが遅いぞ!!」
「ご、ごめんなさいっ!」
「本当に使えないヤツだな……」
「いっそ殺してやろうか!」
「……いい加減にしろ、見苦しい」


その声に気を飲まれ、誰もが口をつぐんだ。



ウラハラconduct



「行くぞクリム、構っている暇はない」
「は……はいっ!」






――――――――――――――







長い三つ編みの髪を揺らしながら、執務室へと向かう死神。
その名はヴェルデと言った。

クリムと呼ばれたもう一人の死神は、その後を着いていく。


「あ、あの……ヴェルデ様…」
「なんだ?」
「………ありがとうございました」
「礼には及ばん、私はお前を呼びに行っただけだ」


二人の間に沈黙が漂う。
微妙に置かれた距離が二人の格の違いをありありと表していた。

が、執務室に入ったヴェルデは、辺りに人がいないことを入念に確認してからクリムに声をかけた。


「……あれから体の具合はどうだ?」
「は、はい……ええと大丈夫です………」
「なら良かった」


それから一呼吸置いて、『上司』が『部下』に声をかける。


「雑用係で疲れているだろうが仕事だ、行ってくれるな」
「は、はいっ!」
「頼んだぞ」


粗方の説明をすれば飲み込んでくれる、出来の良い部下だ。
……尤も、他の上司達からは『役立たず』と呼ばれているが。

別に急かしてもいないのに慌てて出ていく背中を見送ったヴェルデは、深いため息を吐いた。


「さっきの奴等……後で」


どうにかしてやろうか、と言う前に彼の脳裏にある記憶が蘇った。
そしてまたため息と共に呟く。


「……人の事を…言えたものではない………」






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