悪魔がいる部屋
□出会いは
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その夜、私たちは人間界へと降り立った。
そして別々に行動することになった。
一人になった私は、ただ好奇心と不安に溢れていた。
夜の町をふらふら歩いていると、大きな建物の屋上に人影を見つけた。
その人影に何故か心惹かれた私は、その建物の屋上へ上がった。
物陰に隠れて、じっと観察してみる。
優しそうな、それでいて寂しそうな。
そんな目をした青年だった。
彼は、しばらく其処から夜景を眺めていたが、やがてその光に背を向けて、ポケットから何か取り出した。
銀色に輝くナイフ、彼はそれをあろうことか自分の首筋に当てようとしたのだ。
「だめぇっ!」
私は飛び出して彼の腕を掴んだ。
当然の事ながら、抵抗する力は強く、私はすぐに振り払われてしまった。
――仕方ない。こんな事、人間相手にしたくないんだけど。
「うぁっち!」
青年は驚き、ナイフから手を離した。
当然だ。そのナイフは紅い炎に包まれ燃えているのだから。
彼は、落ちたナイフと私を交互に見比べ、震える声で言った。
「……お前……何なんだ?」