捧げ物

□『夢なら覚めないでなんて』誰が言ったんだ
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何時もならば何も無いであろう平々凡々な朝に悲劇は起こった

「な…何こ…もがっ!」

「この馬鹿!声がでかいんだよ!」

大声をあげようとしたあたしの口を、人の姿をした右京が寸での所で押さえ付けた
ちょ、息できない

「……あ、すまん」

必死に右京の胸板を叩いていると察してくれたらしく、漸く息が吸えた
……って、今の注目ポイントはそこじゃない!

「ななななな…何よこのカッコ…」

「俺に聞くなよ」

日本人離れした髪の間から覗く白い猫耳
着ていたワンピースの裾から伸びているふさふさした長い尻尾

「えっと…何つーか…お疲れ」

何だか悟りを開いたかの様な顔をした右京に肩をポンと叩かれた
うわ、ヤバイ、何かムカつく

気が付いたら握りしめた拳が右京の鳩尾にヒットしていた

「あーあ…」

まるで反省の色のない言葉を悶絶する右京に送り、取り敢えず隣の十兵衛さんに相談する為、人気のない庭を伝って十兵衛さんの家に向かった
あの時の彼の顔をあたしは一生忘れないだろう
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