小さな魔法
□はちみつバニー
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月並みではあるが,
席替えをした.
くるりとカールした綺麗なブロンドが,前の席になった.
それは私にとって夢みたいなことで,とても信じがたいことだった.
あ,先生に指されて前に行った.ノートも持たずによく行けるなあ.
そしてこれまた教科書みたいな綺麗な字で数式を解く.
午後の最後の授業.これほど眠いものはないけど,彼が立ち上がったので私は机に伏せた体を起こす.
だんだんと降りてきた日差しが彼の髪にあたって蜂蜜色になる.
とっても綺麗.
彼のすべては綺麗なものでできている気がする.
汚いものなんて1つもなくて,不本意ながらも「完璧」なんて言葉を体現しているみたいだ.
本人そう伝えたら,「あなたは僕を美化しすぎですよ,」と殺人罪で逮捕されそうなくらいの爽やかなスマイルで言った.本当に夢みたいな人だ.
彼が答えを書き終えると丁度終業のチャイムが鳴った.なんてタイミングのいい男なんだろう.
蜂蜜色を揺らして,彼は戻ってくる.
焼きたてのトーストに垂らして食べてしまいたい.
彼が私を見て目が合うと,私はあわてて目をそらして教科書を机にしまう.
「貴方,僕のことずっと見てたでしょう」
「!?」
どうして分かるの.そう言う前に口を塞がれた.あ,唇でではなく掌です.
「貴方の考えていることなら大体分かりますよ,」
彼は私にそう言ってから自分の席に座り直した.
頬が無駄に熱い.