怖い話@

□「コンビニのカメラ」
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後輩は、ローソンの深夜バイトをしていた。 その店は、深夜になるとかなり暇になるらしい。 後輩はいっしょにバイトしている先輩と、いつもバックルームでのんびり漫画など読んで過ごしていた。その日もいつもと同じようにバックルームでお菓子を食べながら後輩は先輩とダベっていた。 仕事と言えばたまにモニターをチェックするくらいである。 モニターは画面が4分割されていて、レジ2箇所、食料品棚、本棚を映しているのだが、ふと見ると、本棚のところに女の人が立っているのを後輩は見つけた。 腰まである異様に長い髪をした女だ。  「おかしいな、チャイム鳴らなかったぞ」と先輩はいぶかしむが、たまに鳴らない事もあるので、さして深く考えず二人はまたしゃべり始めた。  しかし、である。 いつまで経っても女の人は動く気配を見せない。本を読んでいるのかと思えば、何も手にしていない。ひたすらじっと本棚を見つめているだけである。  「おい、こいつ万引きするつもりなんじゃないか」  先輩が言った。どことなくおかしな雰囲気のする女の人である。後輩もその考えが浮かんだところだったので、頷いた。二人で挟み撃ちすることにして、バックルームを出る。先輩はレジ側から、後輩はバックルームへの出入り口から本棚へ向かう。  
いざ本棚へ到着してみて、二人は首をかしげた。そこには誰もいなかったのだ。 おかしい。絶対挟み撃ちにしたのに…。 すると、トイレのほうから水を流す音が聞こえてきた。  何だ、トイレに入っていたのか。おかしな人だな、と思いつつ、二人はすぐバックルームへと戻った。 しかしモニターを見て、二人は初めてぞっとした。 さっきと全く変わらない立ち位置で、女の人が本棚を見つめていたのだ。  「早い。早すぎる。」トイレからそこへ向かうのと、バックルームへ戻るのとでは、明らかにこっちの方が早いはずなのだ。  もしかして、モニターの故障では。 顔を見合わせ、頷きあって二人はもう一度、バックルームから挟み撃ちの隊形で本棚へと向かった。すると、また女の人はいない。  冷や汗がにじむのを感じながら、今度は何も言わずに二人はバックルームへと戻った。無言で、しかし真っ先にモニターを確認する。  「あ、いなくなってるぞ…」 先輩が呟いた通り、モニターからは女の人の姿は消えていた。
後輩の心中にほっとしたものが広がる。 よく確認しようと、先輩の横に顔を乗り出した。その時。 「待て、動くな」  先輩が突如、押し殺した声を出した。「は?」と思ったが反射的に従う。 二人、モニターを覗き込んだ格好のまま固まっている。  「いいか、絶対に今振り向くなよ」やはり先輩が押し殺した声で言った。  何でだろう、と思った後輩だが、モニターをじっと見てそれを理解した。  画面の反射で、自分の顔と先輩の顔が映っている。しかし、その真ん中… もう一つ、女の人の顔が覗き込んでいたのだ! 悲鳴をこらえ、後輩はまさしく硬直した。じっと耐えること数分、その女は 「…………」 と何事か呟くと、すっと離れた。  どれぐらいたっただろうか。もういいぞ、と言われて後輩はやっと息をついた。 恐る恐る振り向いても、誰もいない。  どくどく脈打つ心臓を押さえ、後輩はモニターから離れた。  「ここって、なんかでるんやなぁ〜」 先輩は感慨深げに呟き、後輩のほうに同意を求めた。  「そうですね」  と、先輩を振り向いて、後輩は再び硬直した。その視線をたどったか、先輩もモニターのほうへ向き直る。そこには、さっきの女の人が。しかも今度は… カメラの方を向いて大口を開けて笑っている!!  もう二人は何も言わなかった。 何も言わず、ローソンの自動ドアから夜道に飛び出したと言う…。

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