**銀×土

発情ねこ期
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てなことに考えが及んでから、数日後のある昼下がり。

俺がソファに座ってオヤツのあんころ餅を食ってたら、いきなりガラッと玄関が開く音がしてドタドタドタッ!と踏み込まれた。

家主に断りもなくこういう無体に及びやがるのは、家賃の取り立てか、もしくは御用改めだ。
ズラはあれで礼儀正しいところあるからピンポン鳴らすし、ドMの始末屋はひっそりみっちりと引き出しや茶箪笥に詰ってるパターンが多い。泥棒だったらもっと静かにやってくる。

で、今回は後者の人たちだったけど。
御用改めではなく、依頼だった。

「……ちょ、沖田くん。依頼だったらもうちょっとこう、人にモノを頼むやり方っつーもんがあんでしょーが。つか土足土足。泥棒の人達の方が礼儀わきまえてるよいっそ。あの人たち足あと残さねぇから」
「すいやせんねぇ。このヤローが直前でまた逃げようとするもんで。途中も何度も道外れようとしやがって、まったくどんだけ悪あがきしたら済むんだかねィ。往生際が悪いっつか」
「……ってか、この子そのまま連れて来たの?車で来たんじゃねぇの?」
「まぁ、近いんで別に。で、今回の依頼なんですけど、1匹ペットを預かって欲しいってことでさぁ。ま、見ればおわかりかと思いますが、こんなナリじゃ仕事に差し支えるんで」
「まぁ……ペット預かるのは時々やってっけど」
「じゃ、頼みます。支払いは本人……人じゃねぇか。から貰ってくだせぇ。あ、期限は大丈夫でさ。この人……人類じゃねぇか。有休3桁余ってるんで。つか後任いるんで。じゃ」
「……マジでか」
「…………〜〜〜〜ッ!!」

沖田くんが後は用がない、とばかりに鎖から手を離しさっさとドアの向こうに消えた瞬間。

おそらく怒りと耐えがたい羞恥と屈辱に、ずっと身体と……耳を、小刻みに震わせていた真選組副長(有休消化中)は。

顔を真っ赤にしたままサッと俺の前を横切ると、驚くほど素早く身を翻した。
俺の机の下に。




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