「うっはぁーー!やっぱこうじゃなきゃだよな〜〜!!」
俺はカッと容赦なく照りつける日差しに眩みそうになりながら、手のひらで作ったひさしの下で目を凝らし、目の前に広がる光景を見渡した。
キラキラと輝く水平線、穏やかな白波を立てて寄せては返す広い海、どこまでも続く熱い砂浜、白い雲、蒼井そ……いや、青い空!!
そして視界360度どこを見ても、そこにはキャッキャと楽しげに戯れる若い半裸の女・女・女……!!
(絶景……!!眼福…………!!)
坂田銀時、海水浴場に立つ!!
夢のような光景に思わずガンダム第一話タイトル風に興奮し、排熱ダクト並に鼻息も荒くなる。
うん。
そーだよな。最近いーことなかったし、つか、いーことしたくても相手が全然構ってくんなかったし、いいよな。こんくらい良い目見ても。
うん。
だからいいよな。ちょっとくらい若いオネーチャンと遊んじゃっても!
この場合ホントただ遊ぶだけだし!一緒に甘いもん食ったり、水辺できゃっきゃしたりしたいだけだし!
いやホントに!それだけだから!!
俺は、無意識に頭ン中でそうぐだぐだと言い訳じみたことを呟くと、さっそく……とばかり、辺りを物色し始めた。
薄いビーチサンダル越しにジリジリと足の裏が焼ける感覚を感じながらも砂浜の真ん中に仁王立ちし、しかしここは周到に視線だけで女の子を観察する。
目を眇めるこの顔……そうとは見えないはず。むしろこれ、俺の決め顔だし。一石二鳥。
(どうせならぷりっぷりのデカプリ子がいいよな〜〜。そんで、できたらショートカットの黒髪の子がいいんだけど、そこはまぁ無理いわない)
「……あ、いたいた」
と、ちょうど目の先に、黒の縁取りの白いビキニを着たお姉さんを発見。
いいかも。髪型はロングで1つにくくってるけど黒いし、若過ぎず熟しすぎずちょうどいい感じ。俺と同じくらいか、もしくはちょっとだけ大人のお姉さんてところか。
なにより、ボンキュッボンのナイスバディー。
海辺のガキ率が比較的高い中、マジ大当たりな予感。こんなところに来てまでガキのお守りは沢山だ。
しかもお姉さん、1人でビーチパラソルを立てようと苦心しているのが見えるという、ナイスシチュエーションだ。
これは天も味方してるよな!?行けって言ってるよな!?と、俺は眩しい日差しを仰いで感謝した。
「ちょっとお姉さん、もしお困りなら……」
「はい?」
しかし。
しかし、ここぞという時の甘い低音で、極めてナチュラ〜ルに首尾よく声を掛けたところで。
カラフルなパラソル越しに見えた人影に息を飲み、うっと言葉が止まってしまった。
(あ……!?あれ…………っ!?)
歩いて行く後ろ姿がチラッと見えただけだけど、でも、その姿がやたらに見覚えのある人物に似ていて異様にひっかかった。
たぶん俺と同じくらいの背格好、俺好みのさらさら黒髪短髪はちょっとヤンチャ気味な外ハネセット、どこか偉そうな歩き方…………似てる。似過ぎてる。いや、しかし。
いやしかし違うだろ、と思う。
だって、白Tシャツにグレーのハーフ丈ショートパンツに黒いスポーツサンダル履きてありえねぇから。そんなラフな格好する子じゃないから!
普段着も制服も確かにいっつもモノトーンの子だけど、でもそんな格好してるとこ見たことないから!!
つぅかそもそも、俺の知らない違う男連れてるから…………!!!
(……うん。ナイ。ナイナイナイナイ!)
「あの……?」
言葉だけじゃなく、もし…と右手を伸ばしかけたハンパな姿勢まで固まり、そのままの格好でだらだらだらだらっ…と顔中に冷や汗を流し始めた俺に、お姉さんの綺麗な顔がいぶかしげに歪められた。
「なにか?」
「……あ、いや、あの、その、あの」
いやだから。
アレきっと違う人だから。全く別人だから。
そんで俺は、目の前のセクシーバディーな美人のお姉さんとよろしくやればいいから。
そうは思うものの、もうあの後ろ姿が頭にひっかかってひっかかって焼きついてしまって離れない。
すぐそこに見える豊満な胸の膨らみよりも気になってしまってる。
このかぐわしくも眩しい胸の谷間よりも、自分の思考に出来た深い谷間の方にまんまとハマってしまってる。
(え。これむしろさっきのお兄さんをナンパするべき……!?!!)
ダラッダラしながらいきおい、思考がちょっと誤った方向へ向かいかけた時。
美人のお姉さんに通報されそうになって、我に返った。