E
□約束は安心させる為にある
1ページ/1ページ
「あれ?ロビンは?」
「ん?おかしいな……さっきまでそこで本を読んでいたと思うが」
はて?と船医は首を傾げた。彼の視線の先を見遣ればもぬけの殻となったベッドがある。わかった、と返事をすれば彼は顕微鏡へと向き直った。
先の戦闘でロビンは俺を庇って負傷した。たいした怪我ではなかったのだが、重要なのは怪我の大きさじゃない。もちろん大怪我じゃなくてよかったけど。
−−−俺のせい。弱い俺のせいでロビンに怪我をさせたことが悔しかった。
「……いつになったら俺はロビンを守れるんだよ」
ぐっと拳をにぎりしめる。そうしないと泣きそうだ。カッコ悪い。弱い上に泣き虫なんて最悪だ。
不意にふわっと頭を優しく撫でられた。ビックリして顔をあげるも、そこには誰もいなかった。まさか、と思い辺りをキョロキョロと見渡せば……
「ロビン」
背後の柱の影から目当ての人物が姿を現した。
「泣いているのかと思ったわ」
「泣かないよ」
「くすっ。そうね」
まるで全てを見透かすように、彼女は優しく微笑んだ。ふと、視線が彼女の左腕にいく。真っ白な包帯が綺麗に巻かれている。
「ごめん」
「怪我のことなら気にしないで。海賊なんだもの」
「でも不必要な怪我だ。俺の……俺のせいだ」
「そんなこと考えていたの?」
呆れたように彼女は息をはいた。
「それなら、私が貴方に守られた時も私は申し訳なく思うわ」
「え?」
「私のせいで貴方に怪我なんかさせたくないもの」
「っ」
優しい笑みと一緒にそんなこと言われたら何も言えなくなる。卑怯だ。……また自分が子供じみた思考だったと惨めになる。
「ロビン」
「なに?」
「…………ありがとう」
小さく呟くように発された俺の言葉にロビンは微笑んで、どういたしましてと返してくれた。
「でも、でも俺は絶対ロビンのこと守れるくらい強くなるから!」
「ふふ。期待して待ってるわ」
今度はどこか寂しげに彼女は微笑んだ。でも自分の不甲斐なさにうちひしがれていた俺は、そのことに気づけなかった。
君に誓った約束は、
安心させる為に
あるものじゃない
これは俺に対する
揺るぎない誓い
必ず君を守る
どんな困難も悲しみも
俺が振り払うんだ