銀魂拍手小説

□嘘から出た真
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この物語はフィクションです

つまり……嘘
ただの暇潰し、からかうのに面白いと思っただけ

そうなるはずだった
なのにあの人は案外ピュアだった

土方さん
鬼の副長ともあろう人が……

そんな顔見せられたら、こっちだっておかしくなりまさァ





「すいやせん、忙しいのに呼び出したりして」

「……あぁ、別に……で?なんだよ話って」


タバコを吸いながら軽食を注文した土方さんは、いつもの様子で何も気付いていない

仕掛ける悪戯に笑いそうになるのを堪えながら、俺は演技に入った


「実は……土方さんに伝えなきゃいけねェ事があって……」


もじもじ……なんてしたことなかったが、指先をいじって躊躇ってみる

ぽかんと口を開けた土方さんは、流石に気持ち悪いと思ったのか片方の口角をヒクヒクさせて目を点にした


「な、なんだよ……ハッキリ言えよ、気持ち悪ぃから!」

「そ、そんなデカイ声出さねェで下せェ……!今……言いやすからっ……」


どこまでも下手を装って、相手に食いつかせる

ほら見ろ

土方さん、なんだかんだで身を乗り出してきやがった
餌に食いついた証拠だ

丁度運ばれてきた飲み物を一口飲むと、わざと数秒見つめてゆっくり口を開いた


「………驚かねェで聞いて下せェよ?……実は…俺……土方さんが………す、好き……なんでィ……!」
ブーッッ!!!


同時に土方さんの口からコーヒーが吹き出されて、顔面に直撃した

目は点で、口はパクパク

冷静沈着の副長はもはやどこにもいない

平静を装うと頑張ってはいるみたいだが、顔は真っ赤だった


「わ、わわ悪ぃっ……え、な、何?全ッッ然意味わかんねーんだけどっ……」

「だから……俺、土方さんに恋してんでさァ……恥ずかしいけど初恋なんでィ……」


ここは難しかった

ポッと頬を赤らめたい場面ではあったが、中々そうはいかない

どうしようかと悩んだ結果、息を止めながら喋ったら酸欠状態で顔が赤くなってウマくいった


「ここっ……こ、こ……こ、恋……!?ん、んなわけあるか!!何かの間違いだろ!そうに決まってる!!うん、絶対!!総悟、早まるな!!」


次は涙だ
太ももをぎゅうっとつねって痛みに堪えた

みるみる涙が浮かび上がり、瞳いっぱいに溜めて上目遣い

あえて流さないのがポイント


「土方、さんっ……茶化さねェで下せェよ……信じられねェかもしれねェが、俺の気持ちは本当なんでィ。ずっと想ってた、けど言えなかった……俺……あんたが好きなんでィ……!!」


言い放つと沈黙が続いた

吸うのを忘れて、ただ燃えただけの煙草を押し消すと、絞り出したか細い声で土方さんは答えた


「……少し……考えさせて、くれねぇか……。明日までには……どうにか結論出す、から、よっ……」


そう言うと立ち上がり、伝票を持って逃げる様に出ていった

残された俺は店員を呼ぶ

丁度腹が減って、土方さんの頼んだポテトじゃ物足りない

生姜焼定食を追加して、さっきまで目の前にいた人物を思い出す


……ヤベェ、腹痛ェ……!!

ファミレスで一人思い出し笑いを堪えると、ごまかす様に水を一気飲みした

明日が楽しみでならない
どういう風にネタバラシしてやろうか
きっと土方さんは今日は眠れない
明日、クマだらけの真っ赤な目で現れる姿を想像すると更に笑える

運ばれてきた生姜焼定食のキャベツにマヨネーズをぶっかけて、ご愁傷様〜と呟いた


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