過去拍手

□過去拍手
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「………雪男くん?」


「あっ、な、なにかな?」


「どうかした?…その…ずっと見てるから」



「ごめん…」




視線をさまよわせながら謝る雪男くんだけれど
特に不快な想いはしていないし
見られていた意味もよく分からない




「雪男くん、最近調子どう?」



「あぁ、これといった変化はないかな」



「そっか 雪男くん忙しい人だもんね
手伝えること、なんでも言ってね」



「うん、ありがとう」




何度か声をかけてみるけれど
なんだかあまり集中していないし
やっぱりわたしの顔を見てくる







……なんかついてる?

だとしたら相当恥ずかしい


「ち、ちょっとトイレ行ってくるね!」



「え?あ、うん」






急いで鏡を見てみるけれど
普段通りの顔だった


なにかあったの?なにか伝えたいの?


謎に思って雪男くんのそばに戻ると
心なしか焦っている





「雪男くん」



「うん?」



「……どうかした?あの、普通に言ってくれていいからね!」




やりたいことなら構わずにやってほしい
我慢されては此方も不快だし






「あ、あの…さ」


「なあに?」



やっとなにかを切り出してくれるようで
ドキドキして待つと
赤くなっていく雪男くんの頬が目にはいる




また視線をさまよわせて
口許を押さえて恥ずかしさを紛らわせる素振りする雪男くん





「………」



「お願いが、あるんだけどいいかな?」



「うん、もちろん」





「あの……き、キス、してもいいかな?」






奥村雪男くんはとても律儀な男子です。





(聞かれると恥ずかしいよ…雪男くん…)



(……っそれもそうだよね)

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