Series B

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 自動自滅します

音声が流れてパソコンの電源が落ちた。



「麻里ちゃん!麻里ちゃん!!」



力なく横たわる篠田さんを抱えて
智美は何度もその身体を揺する。



「はぁ…っ…これで…

 あなたたちを…守れた…。

 …あたしの…仕事は…

 これで…おわったわ…。」



「麻里ちゃんっ!」



ドクドクと流れ続ける血液が地面を赤く染めてゆく。



「逃げて…

 逃げて探すの…。」



「…探す?」



「あなたたちを…作った人…。」



「研究者?」



「そう…。

 あたしにはあなたが必要だった…。」



「オレが何なんだよ…っ!」



「あなたの…

 その…無敵の遺伝子が…

 …すべての終わりを

 止められる…ハズだった…。」



「っなんだよそれっ!」



「逃げて…。

 早く逃げて…。」



そう言って篠田さんは
天井を指さした。

その天井には管機構…。



「そこから…上に出られる…。

 ここを出て…西に10キロ…。

 そこの林に

 バイクを隠してる…から…。」



グッと呼吸が浅くなったのがわかった…。



「麻里ちゃんっ!」



「…智美。

 みんな…あなたが羨ましかった。

 あたしも…ね。」



「麻里ちゃんっ!!!」



そう言い残して
篠田さんはゆっくりと目を閉じた…。



 NO.004生命信号なし



部屋のスピーカーから流れた音声。

NO.004…?



思わずオレは
篠田さんのスーツの袖をまくった。

そこには

智美と同じバーコードが印字されていた…。



篠田さんも

ジェネティックだったんだ…。



「いやぁ〜!!」



智美の泣き叫ぶ声と

何度も響くスピーカーからの音。



この研究所が作った兵士が一人、戦死した…。



智美は篠田さんの腕のバーコードを
親指でそっとなぞって目を閉じた。

閉じた瞳からは涙があるれ出ている。

その行為はまるで
ここに篠田さんがいたことを記憶に残しているように見えた。



篠田さんがデータを抹消させた理由…。

オレが必要だった…。

すべての終わりを止める…。

研究者を探す…。



沢山の宿題をオレに残して
篠田さんは
すべての仕事を全うした…。
 
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