Series B

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事実を受け止められないまま…
いや、事実である確証も得られないまま…

何日かの時が過ぎた…。

何日経ったかは分からない…。
この部屋には時計も窓もないから…。



今までの自分や考えや感情が
全部ウソのように感じてきて何も手につかない…。



心が止まったまま
身体だけが果てる…。



智美の仕事だから…。



「コウ…?」



考えたって何も始まらないのは
ここにきて何度も経験したからわかってる…。

でもこれは、まさしく自分に起きている出来事であって…。



「コウ…?」



NO.000…。

それが本当のオレ…なんだろうか?



「コウ…っ!!」



バシンと頬を叩かれた…。



「いったぁ…なにすんだよ…!」



「ずっと呼んでるのに返事しないんだもん!」



「だからって叩くことないだろ…。」



「だってコウ変!

 ずっと変!!」



変…変か…そうだよな。確かに変だ…。



「んっ…。」



智美が急にオレの唇にキスをした…。



と思ったらその唇は徐々に耳元に近づく…。



「静かにして…。

 麻里ちゃんに聞かれる…。」



そういって智美は横目でカメラを見た。



「…わかった。」



小さな声で答えると

耳元でコソコソと話が始まった。



「智ね、ちょっと思い出した…。」



「なにを…?」



「あのね、

 みんなで鬼ごっこをした日…。

 コウが…000が…どこにいたか…。」



「どういうこと?

 あの時000はみんなと一緒じゃなかったの?

 …どこ?」



「あのお仕置きの部屋…。」



「え?あの部屋?なんで?」



「…コウのせいじゃなかった………。」



「なにが?なにがオレのせいじゃなかったの?」



「本当はあの日

 …あの部屋にいなきゃいけなかったのは

 智だったんだよ…。」



「…どういうこと?」



「…思い出せない。

 なんでだったんだろう…。

 それだけが思い出せない…。

 でもね、コウは…コウは…

 女の子のふりをさせられてた…。」



「女の子のふり…?」



「智だけが知ってたの…。

 コウが男の子だってこと…。」



智美の呼吸が乱れ始めた…。

きっと身体が思いだすことを拒否している…。



「まって…もう少しで思い出せそうなのに…。」



智美のオレを抱きしめる力が強くなっていく…。



「ゆっくりでいい…。

 ゆっくりでいいから…。」



そう言って背中をさする…。



「…記憶。」



智美の口から出た言葉…。



「記憶…?」



「そう…記憶だ…。

 記憶を消そうとしてたの…。

 あの部屋で、

 智が知ったコウが男の子だ

 って言う記憶…。」



そうか…篠田さんが男の子がいた事は政府は知らなかったって言ってた…。



「だけど智の代わりにコウがあそこに行ったの…。

 鬼ごっこの時に…。

 その後は…わからない…。」



脱走の混乱で…
身代わりになってたって気付かずに
記憶を消したってことか…。
  
  
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