Series B

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意を決して走り出したのは
篠田さんが部屋を出てから大分時間がたった後だった。

が、心に迷いはなかった。

どんなにいろいろ考えたって何も始まらない。



部屋の扉を開け長い廊下に立った。

智美の指示で
まずこの部屋が並ぶ
廊下を抜けなければならなかった。



前を走る智美を追いかけるようにして
その後ろを走る。

天井にはいくつもの防犯カメラ。

長い廊下の突きあたり
壁際に厳重でハイテクなカギが取り付けられていた。

ちらつく赤いレーザーに
智美が腕のバーコードを認証させると

 NO.016認証しました。

という感情のない音声が聞こえて
重い扉が開く。

智美が先を歩き
オレもその後ろに続いてその扉を抜けると

急に警報が鳴り響いた。

 NO.016
 セクターK侵入
 ナンバー認証不可1名確認
 侵入者の恐れあり

警報とともに響くさっきの音声の声。

赤く点滅するサイレン。



「コウ、

 逃げるよ…。」



智美の声色が変わった。

いつもの
甘いフワフワしたしゃべり方じゃない。

テンションの低いしっかりとした芯のある声が
オレに支持を出す。



警報は響いたまま

さらに続く長い廊下を必死に走った。

 NO.016
 セクターK侵入
 ナンバー認証不可1名確認
 侵入者の恐れあり

くりかえし鳴り続ける音声に

周囲の緊迫感が増して

長い廊下の途中でついに囲まれた。

緊急事態を察してやってきた

いつも篠田さんの後ろにいるような
デカイ男が前に2人後ろに2人。

拳銃を構えて
オレにその銃口を向けた。



「コウ!伏せて!」



智美の声に反射的に身を屈むと

銃声が聞こえ

 ドスッ!バシッ!

その銃声を間を
縫うようにして聞こえてくる衝突音。

その音に顔を上げると
智美がものすごい速さで銃弾を避けながら
その拳銃を構えている男たちを
ボコボコニ倒し始めた。

そうだ、
ジェネティックはもともと戦闘用に作られ
訓練を受けてきたのだ。
ここでそれをようやく認識させられた。



そして
男たちの手元から離れ目の前に転がってきた拳銃。



「コウ、それ持って!」



そう言われて初めて手にした拳銃。



いや、
記憶にないだけでにぎったことがあるような
そんな気がする。

思わず構えた拳銃が
意外にもしっくり手になじんで

 パーンッ!

自分の手元から銃声が聞こえて
銃弾がまっすぐデカイ男たちに放たれ



「さすがコウ!」



智美の声が聞こえ我に帰ると
デカイ男が4人倒れていた。

一人は胸から血を流して…。

 
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