Series B

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オレ達がいたような部屋が連なる長い廊下を張りし抜け
やっと目の前に現れ始めた研究室が並ぶ廊下。

その扉にも取り付けられている赤いレーザーで認証するカギ。

智美はそこでも
何のためらいもなく自分のバーコードを読み込ませる。

鳴り続けるサイレンは更に重厚感を増した。

 NO.016
 セクター0侵入
 至急捕獲せよ

何度も繰り返し鳴り響く警報と
研究室の扉に自動で鍵がかかっていく音が聞こえる。

さすが秘密裏に作られた研究所なだけある。

警備が厳重だ。

開かない扉を何度もガチャガチャと開けようとする。
どの扉もだ。

どこかに脱出できる扉があるのだろうか…。

しかしやっぱりすべての扉にかぎが掛けられていた。

追いかけてくる男たちを何度も振り切り

そして
走り続けたろうかが
ついに突きあたりとなってしまった。

左に曲がればまた長い廊下が続く。
右には上りの階段。

オレは何のためらいもなく
左へ向かおうとしたのだが

智美はオレの手を取って階段をのぼりはじめた。



「麻里ちゃんが…。」



智美が呟く。



思い出した。
目隠しをされて連れてこられたことがある。
目隠しをされていたけど覚えている。
研究室の機械音が聞こえていた。
階段も上った記憶がある。

篠田さんの部屋…。

…ここは地下なのか?



とにかくオレは智美を追いかけてその階段を駆け上った。



階段の先にある
大きな扉に智美はまた自分のバーコードを認証させた。

鍵が開いて扉が開くと
篠田さんがパソコンに向かって焦ったように何かの捜査をしていた。

大きなモニターがこの部屋え写す。
そこに映し出された智美とオレ。

警報が篠田さんの部屋にも響いた。

 NO.016侵入

そんな警報が鳴り響いても篠田さんはパソコンの操作をやめなかった。



「麻里ちゃん!」



智美が声をかけると
篠田さんはようやく振り返り
しかしその表情は緊迫したものだった。

額には汗がにじみ目が充血している。



「じきにここにも警備兵が来る。

 早く逃げなさい。」



焦ったそぶりを取り払うように冷静な声が響く。



「麻里ちゃんも!一緒に!」



智美の声に



「行かない!

 あたしの仕事は

 ここで

 ジェネティックを守ることなの!」



強い決意が垣間見えた。



「…なにしてるんですか?」



そんな緊迫したムードを説くように
オレはそんな質問をしていた。



「データを壊してる。」



「データ…?」



「全ジェネティックのデータ。

 あなたたちのデータも

 この研究所のデータも

 すべて…。」



「…なぜですか?」



「言ったでしょ…。

 あたしの仕事は

 あなたたちを守ることだって…。」



そんな会話を射ている間に
階段を駆け上がってきた男たち。

扉が開いて銃を構えてこっちに向けた。

そして有無を言わさず発砲し始めた。



が…



「打たないでっ!!」



目の前に飛び出してきたのは
篠田さんだった…。



篠田さんの身体に銃弾が撃ち込まれた…。



警備の男たちがたじろぐ…。



「出て行って!!

 出て行きなさい!!

 早くいかないと上に報告する!

 麻里ちゃんを撃ったこと…。」



智美が鳴声にも似た大きな声をあげて
男たちを威嚇した。

男たちも
慌てたようにして部屋を出ていった。

この研究所のお偉いさんを撃ったのは
その下ではたらく警備の男だった…。

 
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