青春の稲妻

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約束の時間に遅れないように
隣町まで急いで自転車を飛ばした。



もう夕日は沈んでいる。



自転車を止めて中に入っていく。

月の灯りだけが照らし出すスタジオ…。



”ムーンライトスタジオ”



閉鎖された工場の広い駐車場をみんなはそう呼ぶ。



「コウ遅い!!」



優子が走ってきて声をかけた。



「今日人多いね。」



「うん!晴れてるからね!」



なんて、優子はやっぱり元気でうるさい。



周りには音楽が溢れて
様々なグループのダンサーたちが踊っている。



その中でもひときわ目立つグループがある。



「コウ!久しぶりじゃん!」



スタジオの中心にいる

佳代ちゃん(野呂佳代)
梅ちゃん(梅田彩佳)
なっつみぃ(松原夏海)



その3人に声をかけられた。



「久しぶり〜。」



と返事をすると



「相変わらずだるそうだね。

 ちゃんと学校行ってんの?」



と最年長の佳代ちゃんが肘で身体を小突いてくる。



「学校は来てるけど授業は受けてないよね〜!!」



なんて優子も大はしゃぎ…。



優子もこの3人と同じグループ。



なっつみぃは踊りながら器用に話す。



「コウ卒業できんの?」



「余裕!」



「絶対無理だろ〜!」



「いけるね!アタシ天才だし。」



そういって爆笑する。



なっつみぃは同い年
でも
この隣町の高校に通っているから
ココでしかなかなか会えない。



「とりあえず踊らんと?」



と年上の梅ちゃんが声をかけた。



「コウブース入って。」



と言われて架設で作ったDJブースに入る。

MIXしたいつものレコードをかける。



その音楽が流れ始めると
騒がしかった他のグループたちは
踊るのをやめて音楽を止める。

そしてその4人を食い入るように見つめて
リズムに身体を揺らす。



”梅島夏代”



ここではトップクラスのダンサーなんだ。



流れるこの音楽はいつしか



”エンドロール”と呼ばれるようになった。



歌詞のない音楽はどこか切なげで

ダンスイベントではいつもラストのトリで踊る
梅島夏代をイメージして
周りが勝手に名付けた。



4人は凄くきれいに踊る。

しなやかでカッコよくて…。



もやもやしている気持ちをいつも晴らしてくれる。


   
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