青春の稲妻

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父親が帰ってきた日曜の夜
ようやく誰だか分らなかった女の人の正体がわかった。



「コウ、この人は

 今日からココで働くお手伝いさんの

 小嶋陽菜さんだ。」



なるほど…。
それで篠田さんにいろいろ教えてもらってたってわけか…。



「よろしく。忍者くん。」



といって笑いかける…。



「よ、よろしく。

 その忍者くんっていうのやめてください…。」



「え〜…つまんない。」



つまんないって…。

ここは遊び場じゃなくて
あんたの職場だろ…。



父親は
アタシと年も近いし
なにかと相談とかもできればいいと思って
って言ってた。

でも、
こんなトボケたやつに
誰が相談なんてするかよ…。



それに
なんだか篠田さんと良い感じ…。



わけわかんない…。



そそくさと食事を済ませて自分の部屋に逃げ込んだ。



すると
携帯に着信があったらしい。

その着信履歴を見て驚いた…。



梅ちゃんからだ…。



梅ちゃんはめったに自分から連絡なんてしてこないのに…。



そう思って
留守電に残されてたメッセージを再生した。



〈ちょっと声聞きたいなぁって思って…。

 ごめん、何でもないや、

 今度スタジオ来るとき連絡まっとーよ?〉



なにかあったのかな…。

声色がムリしてる感じだった…。



思い立ったらすぐに

アタシは自転車を走らせていた…。



隣町の梅ちゃんの家に向けて…。



行く途中に見える友美の家…。

その友美の部屋の窓の灯りに少しの罪悪感を抱きながら

身体は無心で自転車をこいでいた。

   
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