青春の稲妻

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家に帰ると今の電気が消えていた…。

誰もいないのかな…?



なんて思いながら自分の部屋に続く階段を上った…。



「んっ…あぁっ…!」



アタシの部屋の向かいの部屋から漏れる妖艶な声…。



「あっ…だめっ…コウちゃん帰ってきた…。」



「大丈夫だよ…。」



”大丈夫だよ…。”といった声は確かに聞いたことのある女性の声だった…。

…きっと篠田さん。



ってことは妖艶な声を漏らしているのは…。

小嶋さんか…。



やっぱり2人はそういう関係だったんだ…。





部屋に駆け込んで扉を閉める…。

それでもその声は何度も部屋に飛び込んできた…。



自分の不道徳な行為と重なって吐き気がする…。



声が聞こえないように
部屋のステレオの音を最大にして音楽を鳴らした。

頭にガンガンと響く…。



それでもあんな声を聞いているよりましだった…。



何度もくりかえり同じ曲が流れる…。



それでもその曲はほとんど頭に残らない…。



考えることが多すぎるから…。





それからどのくらいたったんだろう…。

誰かに肩をポンポンと叩かれた…。



ドアが開いたことにも気付かないくらいの音量だったんだ…。



振り向くと篠田さんが立っていて

口元に指を当て”シー”っと言った。



そのしぐさに気付いて音楽を止めた…。



「ニャロ寝ちゃったから静かにして欲しいな?」



「は…はい…すみません…。」



ニャロって…。



そう言って篠田さんは部屋を出て言った…。



そう言えば爆音で気付かなかった携帯の着信メール…。



全部智美からだった。



”うるさい!”

”うるさい!うるさい!”
 
”うるさい!うるさい!うるさい!”



それが9通。



そして10通目に



”なんかあったの?”



だって…。



智美はいつも分かったようなふりをする…。



だからアタシは



”ごめん”とだけ打ったメールを送った。


  
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