秘密の果実

□秘密の果実
1ページ/16ページ



雪が降る季節になった。

生徒たちは色とりどりのマフラーを身につけて
濃紺のコートを羽織る。



「おはよう。」



「おはよ。」



智とも挨拶とか日常会話はするようになっていた。

時は日々を癒していくけど
全てを流してはくれない。

やっぱり少しぎこちない。



亜美菜とはあの日からも
よく話をするし
亜美菜は今でも彼女になりたいみたい。

あんなことをしておいて
彼女じゃないってのもおかしな話だけど

自分の中でまだ割り切れない部分はあるから。



冬になるとやっぱり
窓際の席は寒いな…。



「ハクションッ!」



豪快にクシャミをしてしまった。



「風邪?」



ぶっきらぼうな質問。



「バカの癖に風邪ひくなよ。」



「うっせぇよ。」



友は相変わらずウチの一挙一動にイライラしている模様。



それから
冬は眠い…。

いや、いつも眠いんだけど。



授業中に寝ていたら
罰当番として教材の片付けを命じられた。



理不尽だ!!



大きな段ボールに入った教材を準備室に運ぶ。

これが絶妙な重さで…

頑張れば一人でもてなくもない。



「手伝おうか?」



さりげなくウチの前に回り込んで
智が段ボールを抱えてくれた。



学校の廊下を大きな段ボールを抱えて歩く。

段ボールで隠れて智の顔は見えない。



「コウ!!何してんの?」



亜美菜の声が後ろから聞こえた。



瞬間、智の足が止まった。



「よっ!!」



亜美菜がウチの背中におんぶされるように飛び乗ってきた。



「あぶねっ!!!」



〈ズサッー〉



段ボールが落ちて
教材が廊下に転がった。



「智、大丈夫?」



「え、あっ…うん。大丈夫。」



背中に飛び乗っていた亜美菜は



「あぁ…ごめん。

 いや、え?すみません!」



軽くパニックになりながらも
なぜか智に頭を下げてその場を走って行ってしまった。



きっと後ろからは段ボールに隠れて
智のことが見えていなかったんだろう。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ