秘密の果実

□秘密の果実
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久々に懐かしい夢を見た…。

忘れたかった過去…。



屋上からキレイに手を広げて空を飛ぶ少女



忘れられた記憶…。





初夢がこれだなんて…。





全て忘れて何もなかったことになんて
できないってことか…。



真冬なのに目が覚めると滴がわかるくらいの汗をかいていた。



実家から独り暮らしのマンションに戻っても
その夢から解放されることはなかった…。



智に約束した通り
実家から戻ったことを連絡すると
すぐに
"初詣に行こう!"と返事が来た。

気分転換にはちょうどいい。



指定された時間に智が部屋にやって来た。

智は張り切って着物でも着てくるのかと思ったけど
そうではなかった。

でもそうだろう。

最寄りの神社は結構遠いし
きっと混んでるから
歩きやすい動きやすい服で来たんだと思う。



「コウ痩せた…?」



智が心配そうな顔をした。

そうだ、夢を見始めた頃からまともに食事を取れていなかった…。



「そうかな…?」



「なにかおいしいもの食べにいこっか?」



優しく微笑んだ。



手を引かれて家を出る。

神社につくとやっぱり凄く混んでいた。

人の流れにのみ込まれないように
はぐれてしまわないように
智の手をしっかりと握りしめた。



境内の前についてお賽銭を投げて手を合わせる…。



お願いすることは…

今が続くこと…。



そんなことできるはずないけど
願いたくて仕方なかった…。



「何お願いしたの?」



智が無邪気に問いかける。



「秘密だよ!言ったらかなわないんだってさ!」



「じゃあ智も秘密にしておこっ!」





今が続け…。





前に智と来たレストラン。

この前と同じパスタを食べる。

正直、食欲がわかないのだけど
智がいる手前、
無理やりのように胃の中に流し込んだ。



「今日のコウちょっと変だよ?」



「そうかな…?ちょっと疲れてるのかも。」



「今日誘わない方が良かった…?」



「ううん。一緒に来れて良かったよ。」



「ん〜…。」



智は何かを考えるような表情をした。



「智ってそんなに頼りない…?」



不意に智から漏れた言葉…。



そんな風に想わせちゃってたんだ…。



「そんなことないよ。」



そういって微笑み返すと
智は少し不満そうな顔をした。
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