秘密の果実

□秘密の果実
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病院の入院生活はやっぱりつまらない…。



せっかく新しいクラスも面白くなりそうだったのに
こんな時にあんな事になって
怪我で入院なんて…。



怪我の具合が大体良くなってきて
個人部屋から大部屋に移動になってから
みんなも遠慮してなかなか見舞いに来てくれなくなった。

チョット動けるようになったから
余計につまらなく感じてしまう…。



だから
暇なときは院内をフラフラする。

そしてお気に入りの場所を見つけた。

病院の中庭のベンチ。

そこにすわって
智や才加がくれた本を読んで過ごす。



そんなある時
一人の女の子に声をかけられた。



「そこ…私の場所だったんだけどなぁ…。」



その声がする方を見ると
綺麗な女の子が立っていた。

すらっと背が高くて黒髪ロングのストレートに
ちらっと覗く白い歯に大きな瞳。

しばらく見とれているとさらに声をかけられた。



「もしかしてアキ女の生徒?」



「え?!知ってるんですか?」



驚いて立ち上がるとあばらが痛んだ…。



「うん。知ってる。

 私もアキ女なんだ〜。」



「そうなんですか〜。」



「確か、キミ、階段オチの子!」



思い出したようにウチを指さして笑った。

そう言えばもうあの頃から1年も経ってる。



「あれ知ってるんだ…。」



「知ってるよ〜アレでキミ有名人だもん!」



そう言って笑う姿は
綺麗な見た目とのギャップで可愛らしい。



「キミ何年生?」



「3年です。」



「あ!私と一緒だ!」



「え?!そうなの!同級生か〜!」



テンションが上がっていると



「でも、正式にはキミの1つ上。

 去年入院してて卒業できなかったんだよね〜。」



と、急に重たい話し…



「そ…そうなんだ。」



「あぁ!全然気にしないで!!

 ごめんごめん!!

 そうだ!

 私、倉持明日香。明日香って呼んで!

 よろしく。」



「コウ!タナセコウです。

 よろしく。」



座っていたベンチに少し横にずれて腰をかけ直すと

明日香はその横に腰をかけた。



明日香が開いたのは
全く似合わないプロレス雑誌だった。

チョット驚いて二度見してしまうと
明日香は
なに?って感じでこっちを見たから

なにも。って感じで
自分の呼んでいた本をまた読み始めた。



それから毎日同じ時間に
この中庭のベンチで本を読む事にした。



すると
明日香もやってきて
色々話をするようになっていった。



ひまな入院生活が
少し楽しくなっていった。


   
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