チユウと恋したら…

□チユウと恋したら…
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ついに海外勤務から日本に帰ってきた。

アシスタントだった自分が
すべてを任せてもらえるほどに成長した。

あれから5年半が経っていた…。

日本支社では
ジャーナリストカメラマンとして
割と良い役職をもらった。

日本での知り合いはオレを見て
変わったと口にした。

うん、見た目は結構変わったと思う。

色も黒くなったし
髭も伸びた

ちょっとキタナイ…かもしれない。

色んな現場を重い荷物を持って駆け回って筋肉もついた。

業績も認められて少しは自分に自信がついた。



あの日から
彼女は作っていない…。





鍵を刺して家のドアノブを回す。

懐かしい玄関。



あの頃と同じ匂い…。



あの日とほとんど変わらない玄関。



荷物をおろして
部屋の中に入る…。



物音一つしない部屋の中…。



あのころと変わらない景色…。



少し片付いているように感じた…。



トモを思い出す…。



几帳面できれい好き…。
根っからのA型気質…。



リビングもキッチンもキレイに片付いていて

…ベッドはあの日のままだった。



ゆっくりと腰掛ける。



カバンから
今朝空港で買ったスポーツ紙を取り出して読み始めた。



芸能のページの隅…

懐かしい文字に目を奪われた。



”AKB48解散”



の文字…。



その発表がされたのは
オレが日本に帰ってくる3日前の事だった。

不意に襲う不安感…。



トモは何やってんだろう…。





と、心の中のもやもやと同時に思い出した約束…。



 今のことが全部終わって

 自由になって、

 周りのこととか
 
 仕事のこととかメンバーのこととか

 そんなことが全部なくなったら

 コウくんがいつ迎えにきてもいいように

 トモはコウくんを待つよ…。



あの言葉がよみがえる…。



 じゃあ約束…。

 オレは帰ってきたら

 必ずトモに逢いにいく…。

 その時トモがどんな状況でも

 必ず逢いにいくから…。



そうだった…。



部屋を見渡しても…あの時渡した逢いカギは見当たらない。


   
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