Series B

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オレは
はぁはぁと肩で荒く呼吸をしていた。

初めて人を撃った…。

ううん、初めてじゃなのかもしれない。

良くわからない感覚に
身体の血液がふつふつと煮えたぎっていくような気がした…。



「コウは

 拳銃の名手だった。」



そう言って智美は
倒れている男たちの拳銃を手にとってまた走り出した。

オレもそれについていく。

さっきから警報は鳴り響いたまま。

だが
頭の中でさっきの絵が鮮明に残って離れなかった。

何の抵抗もなく
智美は男たちをなぎ倒し拳銃を手にする。
ものすごい速さで銃弾をかわしデカイ男たちをあの華奢な身体で…。

ジェネティック。

…兵士。

なんだ急に怖くなった…。

彼女はやっぱり
ココから連れ出してはいけないのではないか…。

戦闘態勢に入った智美はまるで
殺人マシーンの様だ…。

いや、拳銃で人を撃ったのはオレだ…。



「コウ?」



知らぬ間に立ち止まってたオレに智美が声をかける。

その目は…それでもやっぱり智美で
あどけない表情…。



「行かなきゃ。

 …もしかして智のこと怖い?」



そうだ…智美は周りの影響されやすい。



「怖くないよ…大丈夫…。

 自由に…なるんだろ…?」



オレが連れて行くって決めたんだ。
こんなところに
置いてなんか行けない。



再び走り出すと
ようやく見えてきた廊下の向こう側。

しかし

その目の前で鉄柵がゆっくりと行く手を阻むように
天井からおり始めてきた。



「コウ!急いでっ!」



さっきよりもスピードを上げて走り出す。

それでもこのままじゃ間に合わない。

そう思った時

 ガシャーン!

向こう側から走ってきた誰かが
降りてくる鉄柵を持ち上げ始めた。



「才加っ!」



智美の声。



「NO.016!急げっ!!」



才加と呼ばれたその人は
なぜがオレ達に手を貸してくれた。

その力はものすごいもので
鉄柵がバシバシと火花を散らしながら
その人の力で天井へ戻っていく。

前に篠田さんから聞いた。
ものすごい力があってオレくらいの男なら簡単に投げ飛ばせる。
NO.017だ。



鉄柵を潜り抜け
その人が鉄柵から手を離すと

 バーン!

と鉄柵は一気に地面へ下がった。



「才加…なんで?」



智美がその人に尋ねる。



「麻里子からの指示。

 それ以上は言えない。」



そんな答えが返ってきた。

篠田さんが
オレ達を助ける指示を出したのか…。



「才加もココから出よ?!」



「あたしはいけない。

 あたしはNO.016、智美とは違うから。」



そう呟く涼しげな顔。



「才加…。」



「逃げて、逃げて自由になって。」



そう言ってその人は
鉄柵に身体を持たれた。

 
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