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□どーる
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―「ゆーとくんはサッカーじょうずだね!みてるあたしまでたのしくなっちゃう!」


―「ほんとーか?」


―「うん!」



いつだったか…
施設で出会ったアイツにそう言われて、俺はひたすらに誰よりもサッカーを上手になろうと頑張った。


しかし幸か不幸か…
強くなった俺の姿が総帥の目に止まり、俺は鬼道家に引き取られた。
もちろん、妹の春奈ともソイツとも会えなくなった。


そしてそれから数年後…
俺はソイツと再会した。
















「鬼道様、総帥がお呼びです。」



帝国学園サッカーボール部マネージャー苗字名前は今日も無表情で淡々と抑揚のない口調でそう話す。
それはまるで喋るだけの人形のようだ。
いや、実際のところ人形なのかもしれない。
名前はとても整った顔立ちをしているし、肌は真っ白。
本当に血が通っているのか誰もが気になる程だ。
それに名前は――笑わない。
泣かない。
決して影山の命令に背かない。
そしてマネジャーとしては、できすぎているくらい優秀。


そんな名前はまさに影山の人形だった。


名前は中学校から帝国に入ってきた。
鬼道は名前との再会を喜んだが、名前は鬼道の事を忘れていた。
しかも名前は特に鬼道とは一線を引いているようだった。
他の部員にはさん付けで呼ぶのに、鬼道には様付けで呼んでいるのがいい証拠だ。
そうして鬼道と名前には大きな壁ができていった。
とてもじゃないが、昔のような関係には戻れない。



「わかった…。そうだ、苗字。俺がいない間、俺の代わりにデスゾーンの合図をあいつらに出してやってくれ。」


「仰せのままに。」



名前は綺麗に上半身を折り曲げた。



「(仰せのままにって…苗字は召使いか?)」



そんな事を考えつつ、鬼道は影山の元へ向かうのだった。




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