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□我が儘なのは好きだから
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多分、名前という少女はツンデレである。
予め言っておく、名前はツンデレだ。
9割程ツンが占めているが、間違いなくツンデレ。


ここまで言えば皆さんも名前がツンデレだと理解して下さった事だろう。
何故ここまでツンデレを強調するかというと、これくらい言わないと名前という人物を勘違いしかねないからだ。
いや、言っても勘違いされるのではないだろうか  …?







鬼道は彼女である名前にバレンタインの事を尋ねた。
すると名前は予想の斜め上を行く返答をした。



「何言ってんの。鬼道がチョコ持ってきなさいよ。逆チョコってやつ?」



鬼道は唖然とした。
日本の常識として、バレンタインと言えば、女子が男子にチョコを渡す日。
にもかかわらず、何故か鬼道はチョコを要求されている。



「俺が…お前に?」



すると名前は鬼道を睨んだ。



「お前って言うなっつってんじゃん。お前お前言ってると別れるよ?」


「すまない。」


「あたし、ブラウニーが好きだから。」


「そ、そうか…」



鬼道は引きつった笑みを見せる。
名前はそれに気付きながらも、無視して続けた。



「不味かったら作り直してもらうから。」



鬼道は心の中で盛大に溜め息をついた。







☆ ☆ ☆







バレンタイン当日  


名前は普通に友達にチョコを配っていた。
市販だが。


鬼道はそれを見て最初は何も思わなかった。
しかし、名前が円堂にチョコを渡した辺りから雲行きが怪しくなった。
それもそうだろう。
彼氏である自分には作らないどころか作れと言うのに、他の男子には市販ではあるがチョコをあげているのだから。


鬼道は昼休みに名前を連れて教室を出た。
向かう先は屋上。
半強制的に連れていかれた名前はむすっと不機嫌そうな顔をしている。
しかし、それは鬼道も同じだった。



「どういう事だ、名前。」


「何が?」


「俺以外の男にチョコを配っていた事だ。」


「普通に義理チョコ兼友チョコだけど?」



名前はしれっと答えた。
だが当然の事ながら鬼道は納得するどころか、内に秘めた怒りを増幅させた。



バァン!



鬼道は大きな音を立てながら、壁に手をついた。
名前は目を見開きながら、固唾を呑んだ。



「ふざけるな!我が儘の度が過ぎてるとは思わないのか!?」


「思わないわよ!彼氏なら彼女の言う事聞くのが当然でしょ!」



鬼道に怒鳴られ、名前はムキになって鬼道を睨んだ。



「……呆れさせる」



鬼道は皮肉気に笑って、教室に戻ろうとした。



「………待ちなさいよ。」



鬼道が扉を開けたところで、名前は鬼道を呼び止める。



「これ…」



顔を見られないようにしながら、鬼道にピンク色の小さな袋を押し付けた。



「ありがたく思いなさいよ。家庭科嫌いの私が鬼道だけに作ったんだから。」



鬼道は目を丸くした。



「……本当か?」


「何?疑ってるの?」


「いや、そういう訳じゃない。ありがとう。」



鬼道は優しく笑った。
名前は耳まで真っ赤にして、その場から走って逃げた。





我が儘なのは好きだから

(恥ずかしい…っ///)






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