戦国BASARA
□第7開
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ゆっくりと、でも淡々と佐助は言葉を紡いでいく。
それがやっぱり世界の違いを感じさせるから、もうこれ以上は聞きたくなくて、
佐助の腕から逃れたくて、体に力を入れて佐助を押し退けようとした。
「こら、人の話しは最後まで聞く!!」
「っぎゃ!!?」
でも、より強くぎゅ、と抱きしめられて、抵抗する隙までも無くなってしまった。
「でね、名無しさんちゃん。“俺様”では無理だけど、“俺”は違うんだ。」
「…はい?」
「俺はさ、何でか名無しさんちゃんの世界、つまりこちら側へ来てしまった。
そして生活し、慣れ、少しは馴染んでるように感じるんだけどー、
それは俺だけ?」
「いや、メッチャ馴染んでます。」
「でしょう?ってことはもう、あちら側だけの存在じゃなくて、
俺はもう、こちら側にだって存在している、ってことなんじゃないのかなぁ?」
肩に埋められたままだった顔をゆっくりと上げ、見つめてくる目は優しく細められている。
よいしょーと私を反転させ、頬を包んで目を合わせられる。
「“俺”は、名無しさんちゃんに応えてあげられる。
答え、聞きたくない?」
「聞き、たいような、聞きたく、ない、ような…」
応えられないと言われて一気に下がっていた熱が、また顔に集まってきて、
じんわりと目頭が熱くなってくる。
同時に視界もにじんでしまっているのを、佐助が親指で拭い、ちゅ、と目蓋に、続けて鼻へと唇を落としてきた。
「うん?」
「好きだよ、名無しさんちゃん、大っ好き」
そう言ったかと思うと、正面からきつく抱きしめられる。
少し苦しいけれど、その腕の強さが、今は心地いい。
この腕の強さを失う日が来ることをこの時、私は忘れていて、
嬉し涙を一筋、こぼしていた。
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