緋色の夜明け
□だって、君が好き。
1ページ/2ページ
不意に、嫌な予感がした。
「ひー」
…来る。
「とー」
あいつが、来る。
「しー」
俺の平穏な時間が終わりを告げ…
「させるかあああぁぁぁっ!!」
「きいいぃぃっ!!」
「うおっ?!」
とっさに横跳びで避けたおかげで正面衝突は免れたが、すごい勢いで走ってきた奴はその勢いを殺しきれずに、俺の後ろにあった自販機へと突っ込んだ。
その直後、グシャ、とかいうような鈍い音。
俺の背中に無残な姿を晒す自販機(だったもの)。
…俺、よく生きてたな。ホント。
「いってー…何で逃げんだよ。冷てぇなぁ、人識(ひとしき)ぃ?」
何をどうしたらそうなるのか。
そう思うほど見事に壊れた自販機(原型留めてないけどな)を蹴飛ばして。
出夢…匂宮出夢(におうのみや いずむ)はその牙のような八重歯を光らせて笑った。
「…出夢。何しに来た?」
「ぎゃはははっ!焦らすなよ。遊びに来たに決まってんだろー?」
「『焦らすな』か。かはは…。
その思い込みの激しさ、なんとかならないのか?」
「疑問形…ってことは無理なの分かっちゃってるんだよな!
うっわー、僕ってば愛されてるぅ!ぎゃははははっ!!」
「かははは…。頭いてぇ。」
高らかに笑う出夢に対して微かな殺意と激しい頭痛を覚えた俺は…普通だよな。
「そもそも、何で俺の所に来るんだよ。
遊び相手が欲しいなら兄貴を紹介してやるって前から言ってんだろ?」
「そう言うなよ人識ぃ。僕は人識がいーの!愛しちゃってんの! Are you OK?」
「No. …って言ったら?」
「それでも愛してる! 僕は―…」
「あー、分かった分かった。俺もお前を殺(あい)せばいいんだろ?
覚悟しろよ?あくまで情熱的に!
殺して解して並べて揃えて晒してやんよ!」
「ぎゃは、そうこなくっちゃな!
愛してんぜ、人識!」
Next→懺悔室。