涙恋ーRUIRENー

□満月の夜に涙
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『よしっ!これで大丈夫だな。』



荷物を詰めたバッグを部屋の隅に寄せ、僕は立ち上がり部屋を出る。


ここを発つのは明日に決めた。
だからその前に勲やみんなに挨拶しようと、道場に足を運んだのだ。



『いーさおー!』


「なんだ?桜。腹でも減ったか?」


『いや、暇だから剣術の相手になって貰おうと思って。』


「おぉ、そうかそうか!よし、相手になろう!」



勲から木刀を受け取ると、みんなが開けてくれた道場の中央へ立つ。


笑顔だった勲はすぐさま真顔になり木刀を構える。

僕はそんな勲に余裕の表情を見せると木刀を横向きに構えた。



「準備はいいな?……はじめっ!!」



審判をやってくれているトシ兄の言葉に僕はすかさず木刀を横に振るう。


勲はそれを木刀で軽く止めて、すぐに弾き返し斬り込んでくる。

















「勝者近藤っ!!」


『はぁ、はぁ…』


「どうした桜?今日は腕が鈍ってたじゃないか。」


「あの日ですかィ?」


『うっせぇ馬鹿。』



勝負は勲の勝利で終わり、僕は木刀を直し道場を後にした。


そのうしろを勲、総悟、トシ兄がついて来るのを気にせず僕は足を進める。


向かう先はミツバ姉がいるだろう、井戸だ。

さっき、井戸で洗濯物してたからな。



『あ、いた。』


「あら、桜ちゃんにみんな。鍛錬お疲れ様。」



たった今、最後の一枚のタオルを干し終えたミツバ姉は笑顔でこちらに振り返った。

僕も笑顔を返すと、縁側に腰掛ける。


その右隣にミツバ姉、左隣に勲、総悟、トシ兄の順に座った。









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