涙恋ーRUIRENー

□聞きたく無い
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『今なんて…』


「だから、お前が探してる泉谷骸は









鬼兵隊幹部だ。」


『何それ。』



朝、目が覚め時計を見てみれば2時間の遅刻で。

もうこんだけ遅れてたら急いでも意味ないと思ったアタシは着替えをすましのんびりと廊下を歩いていた。



そしたらトシ兄に捕まり副長室へ拉致られた。


不思議な事に、そこには勲に総悟とお馴染みなメンツが揃っていた事に驚いた。



で、冒頭に至る。



『ちょっと待って…何の冗談?』


「冗談じゃねぇ。これははっきりとした情報だ。


ほら、写真もある。」



そう言って何処から共なく出してきた写真をトシ兄から受け取る。


マジマジとそれを見てみれば鬼兵隊の船だろう場所に高杉と共に入って行く一人の男が。

二枚目にはそれのアップバージョンがあった。


その写真に写っている男は昔とは違い髪がのびた正真正銘アタシの義父、骸だった。


間違う訳がない。
これは骸だ。
だけどなんで?
なんで高杉何かと…



ぐしゃりと写真を握り締める。



「間違いねぇな?」


『確かにこれは骸だ。だけど、骸は攘夷志士何かじゃない!』


「じゃあ高杉といるのは何でですかィ?」


『そんなの知るわけ無いだろ!』



ダンッ、と勢い良く立ち上がれば三人の悲しげな瞳がアタシに向いた。

だが、勲はキリッとした目でアタシを見てはっきりと命令した。



「桜、泉谷骸の関係者として質問に答えて貰う。」



勲の発言にアタシは頭が真っ白になったと共に何かにヒビが入ったような音がした。



『な、にそれ…何それ!アタシは敵だってか!?間者だってか!?ふざけるなっ!!アタシがどんな思いでミツバ姉を置いてここに来たと思ってんだ!
どんな思いでここに入ったと思ってんだ!

骸を探すためもあるけど…
アンタらの、力に…なりたかったから…だよ…



なのに…何で…







アンタ達を信じたアタシが悪いのか?』



静かに流れた涙を乱暴に拭うと三人とは目を合わせたく無くなりアタシは屯所を抜け出した。


勲が何か叫んで居たけど気にせず走った。




鉛色の空からはアタシの感情を表すかのように大粒の雨が振り出し始めた。















どれくらい走っただろうか。

気がつけばアタシは万事屋の目の前に居て。
だけど何処か入り辛くて玄関の前で立ち尽くしていた。



『………』



雨が激しさを増し、雷まで鳴り始めた。

髪の毛からはポツリポツリと雫が落ち地面を濡らす。


そしてゆっくりと冷えた手でインターホンを押した。





ピンポーン






やけに静かな空間にそれの音はやけに響き渡ったように聞こえた。

数秒待って居れば中から足音がして、玄関の引き戸が開いた。


そこには万事屋の母、新八君がいて雨に濡れたアタシを見て目を見開いていた。



「桜さん?ど、どうしたんですか!?そんなずぶ濡れで!」


『………銀時、居る?』


「銀さんですか?居ますよ。そんなずぶ濡れじゃ体冷やしますよ、早く入って下さい!温かいお茶でも出しますから。」


『ごめん…』



力無く新八君に謝り、アタシはずぶ濡れの靴を玄関で脱ぎ広間へと足を進めた。


歩くたびにぴちゃぴちゃと嫌な音が響き渡る。



「新八ィ、客か……桜?」



ソファに寝転んだまま面倒くさそうにこちらを見た銀時はアタシを視野に入れるや目を見開いた。



「お前っ、どうした!そんなずぶ濡れで!?」


『ぎ、んとき…』


「話は後で聞くからシャワー浴びてこい!着替え出しと居てやるから!」



グイグイと背中を押して風呂場へ連れて来られたアタシはまた小さく『ごめん…』と言うしか出来なかった。


そんなアタシに銀時は何を聞くでも無く、頭を乱暴に撫でてくれてから脱衣所を出て行った。






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