涙恋ーRUIRENー
□さよなら、少女
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刺した。
そう、刺した感覚は絶対にあったんだ。
だけど、それより早く左胸と腹に銃弾が食い込んだほうが早かった。
前屈みになった時に蹴りをくらい、気が付けば身体は海の上に放おり出されていた。
「桜ァァアァア!!」
誰の叫び声を最後にアタシは意識を失った。
ザバァァァアン
***
「嘘だろ、おいっ…」
今、目の前で起こった悲劇に俺はただ目を見開く。
隣で土方さんが痛いぐらい拳を握りしめているのが分かる。
「…確保。確保しろぉおぉぉお!!」
近藤さんの声に我に返った俺はすかさずこちらに背を向けたままの泉谷骸に走り寄り、手錠を嵌めた。
視線を手から顔に上げ俺はすぐに顔を逸らした。
「何であんたが泣いてるんでィ。あんたが殺ったんだろ、あいつを。」
そう、泉谷骸は悔し気に眉を寄せ静かに涙を流して居たのだ。
うしろからはチャイナがあいつを呼ぶ声が聞こえる。
「ははっ…やっぱり何回やっても【家族】を殺すんわ辛いもんじゃのぉ…」
「あんたっ………山崎、連れてけ。」
「は、はい!」
泉谷骸を山崎に任せると、急いで桜が落ちたであろう場所へ走った。
血が滲む海を泣き叫びながら見ているチャイナの隣に並び俺も海を見やる。
「桜っ…」
「嫌アル、桜!何で、何でアルかァァア!」
「っ…クソ!」
「桜さん…」
「くっ…」
「桜、すまないっ…」
5日間、ずっと桜の行方を探したが死体も見つからず生死すら未だ分からないままだった。
それから近藤さんは何処か元気がなく、土方さんもマヨをあまり摂取しなくなり旦那やチャイナ、志村弟に至っては笑顔を見せなくなった。
俺は…
俺は…
ただあいつが返ってくる事を願ってあいつの部屋で昼寝する事が日課になった。
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