ムゴンノ カンジョウ
□【4】後ロ向キ反転、視界辿ッテ
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突然に思える、
寡黙期間。
声帯が塞がれたかのように
無言を続ける。
そうして忘れた、声の出し方。
視線ばかりが宙を這う。
叫ぶなんてとんでもない。
呼ぶ名は
いくつも知ってる
けど
呼んでいいのか
戸惑ってた長い間の
どうでもいい名残が
両手まで縛り上げる。
錘の付いた指先じゃ
自分の足跡すら辿れないままに
きっとしばらくしたら
海の底。
沈んで
浮かんでこれなくなるだろう。
できるうちに
やっときな。
限りある酸素も
生存競争の激しい世の中だからね。
歩けるうちに。
視えるうちに。
触れることのできる今
抱きしめてやりなよ。