小話∀
□ひらり
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ひらり
青空の下二人して屋上のコンクリートに腰を下ろし、食べ終わったパンの空き袋を少し先に放り投げる。
取り留めのない会話をしていると、ひらり、高杉の髪に一匹の蝶がとまった。
太陽の光を浴びて煌めく、綺麗な羽をもった蝶。
髪飾りみたいだな、なんて笑っていると、ふん、と鼻を鳴らし差し出した高杉の手にひらり、髪にとまっていた蝶が移動する。
その蝶があまりにも高杉に似合っていて、華やかな羽が彼を引き立てていて、タバコを吹かすのも忘れて魅入っているとクックッと高杉が笑った。
「なんだァ?土方。」
「いや、蝶がよ…」
「あぁ、」
目を伏せ軽く口づけると手を空に向かって上げる。
ひらりひらり、飛んでいく蝶。
高杉に操られているかのよう。
「綺麗だろ?」
そう言って目を細め、妖しく笑う高杉は蝶よりも何よりも綺麗で、俺はまた言葉も忘れて見惚れていた。
ひらり、俺たちの上に蝶。
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