小話∀
□2沖
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《沖田×高杉先生》
銀魂高校の美人保健医高杉のもとには今日も一人、生徒が来ていた。
彼の隣に腰掛けて座る栗色の髪の少年は今日はやけに元気がないように見える。
幼なじみをからかい悪質な悪戯を仕掛けてはサディスティックな笑みを浮かべる姿ばかりが印象に残っているため尚更だった。
高杉もこれは流石に何かあったのだろうと思い、対処の仕方に困っていた。
「沖田、どうしたんだァ?」
「先生、俺、俺、」
「うん?」
なるべく優しく聞いて、次の言葉を促す。
「俺ァ、…病気かもしれねぇんです。」
至極深刻そうな面持ちで話す沖田に、高杉もつられる。
「そ、そうなのか。」
「はい、最近動悸が激しくて…」
「動悸…、医者には行ったのか?」
「いえ、まだでさァ。」
「他に症状はないか?」
少し考えるそぶりを見せてから、そういえば、と口を開く。
「顔が熱くなったり、目が合わせられなかったり、同じ人が頭から離れなかったりしやす。それから、その人を手錠や鞭や縄でめちゃくちゃにして悦ばせてやりたくなりやす。」
そこまで聞いた高杉は沖田のいう“病気”の正体に気付いた。
いや、病気でもなんでもない。
ときに病に例えられることもあるけれど。
「沖田、それは“恋”じゃねぇのか。」
「恋、ですかィ。」
「あぁ。」
手錠や鞭などが出てくるところもドSな彼なりの愛情表現なのだろう。
恋、恋と呟きながらまた考えているようなそぶりをし、一人納得したようだ。
しかしそれもつかの間再び表情を曇らせる。
「先生、…男が男を好きって、どう思いやすか?」
高杉は一瞬驚いた顔をした。
沖田が好きなのは男なのか…。
ここは生徒を傷つけないようにしなければいけない、と思い、瞬時に思考を巡らす。
「男ァ同性愛になんの偏見もないからよ、全く構わねぇと思うぜ。まあ頑張れや。なんなら俺が相談乗ってやる。」
優しく言ってやると沖田は感激したように高杉の両手を自分の両手で包み込むように握ってきた。
「ありがとうございやす!!自信がつきやした。」
「そうか。」
「はい。あ、そろそろ授業なんで行ってきまさァ。」
本当にすっきりした表情を浮かべた沖田は颯爽と歩いて行った。
扉を閉める前振り向き様に一言。
「次来るときはちゃんと手錠も縄も持ってきまさァ!」
「は…?」
唖然とする高杉をおいて走っていく沖田は廊下で言葉の爆弾を落として行った。
「好きになったのが高杉先生でよかったなァ!」
遠くで聞こえたその言葉に、勇気付けてしまったことを後悔する高杉だった。
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