お題

□食べちゃうぞが冗談に聞こえません!
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「きりーつ」

ガタガタと椅子が引かれ、立ち上がる音。

もちろん俺は座ったまま。

「れーい、着席ー」

いつものことだから特に咎める者もなく授業は始まった。

「ジャンプの39ページ開けー」

「持ってねぇよ!!」

「しゃーねぇ先生が朗読してやるから聞いてろよー」

「いや、しなくていいよ!!」

志村弟の抗議むなしく銀八の朗読は始まった。

「『強がるな…お前の死は確実だ』『再不斬…少しはしゃぎ過ぎたな』」

「って、アンタそれいつのジャンプだよ!?」

「お前空気読めよー、今カカシ先生が話してるとこだぞ!?」

「先生が空気読んでちゃんと授業やって下さい!テスト近いんですから…」

「めんどくせ…ぶっちゃけお前らのテストとかどうでもい…」

「オイイィィ!!アンタ今教師として言っちゃいけないこと言ったよ!?」

「うるせーなやればいいんだろやれば」

「はい、まあ…」

「じゃあ教科書59ページー。」

みんな教科書を開く。

やっと授業をまともにやりだした銀八は古文の朗読をする。

「家居のつきづきしく、あらまほしきこそ、仮の宿りとは思へど―――」




静かな教室に響く銀八の声。

それが子守唄の代わりになって、瞼が下がってくる。

いつの間にかこくこく揺れ出す俺の頭。

時々聞こえるチョークの音が心地好い。

今は、そう、夢の世界と現実の境界をふらふらしている感じだ。

椅子から落ちるといけないので机に突っ伏す。

だんだん、だんだん遠くなっていく声…。


「この時兼行はー…あれ?高杉ー?寝てんの?」

「高杉さんならさっきからずっと寝てますよ」

「ちょ、せっかく高杉のために授業やってんのに!?ひどくね?なんなの高杉!!」

「高杉さんのためにやってたの!?アンタがなんなんだよ!?」

銀八と志村弟が俺のことなんか言ってる…

眠いからどうでもいいけど。

「高杉ー」

銀八が近づいてくる気配。

「久しぶりの真面目な授業やってんだからちょっとくらい聞けよー、先生泣くぞー」

無視して眠るふり。

目を開けるのがたるい。

「高杉ー高杉ー……」

俺の机の前で根気よく呼ばれていた名前が聞こえなくなったと思ったら、突然耳にかかる吐息。


「起きないと食べちゃうよ?」


!!??

眠気なんか一気に覚めて、ばっと起き上がると満足げな銀八の顔。

それとクラス中の視線。

「やっと起きた。じゃ、授業再開ー」

呆然と見つめる俺を気に留めず黒板に向かって行った銀八に、みんな一斉に叫んだ。


「先生、食べちゃうぞが冗談に聞こえません!







(「んー、だって冗談じゃねぇもん」

「…それ、どういう意味…?」

「そのまんまの意味だけど?」)




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