連載
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「晋ちゃん?」
国語教室に入った瞬間、彼、晋ちゃんは抱き着いてきた。
強い力で俺の白衣を掴んでいる。
「銀…八ィ…!」
俺の胸に顔を埋めている彼の頭を撫でてやる。
「俺、土方が沖田のこと好きなの知ってんのに…沖田も土方のこと好きそうで、友達だから喜んでやんなきゃなんないのにっ、今、すっげ、嫌だった…。引きはがしてやりたいって…俺、嫌なヤツだよな…。こんなん知られたら、、アイツに嫌われちま…う。」
目に涙を溜めて話す彼を、優しく抱きしめる。
「晋ちゃん…、シよっか?」
「…銀…八?」
机の上にあった布を目隠しにして、彼を押し倒す。
「ん…」
「晋ちゃん…」
「ふ…あっ」
晋ちゃんは抵抗しないで俺の愛撫を受け入れる。
だけどそれは、俺を求めているわけじゃない。
俺の一方通行の想い。
だからこんなに、
心が痛い。
初めに誘ったのは俺。
晋ちゃんが多串くんを好きなことも、多串くんが晋ちゃんに気があったことも、初めから全部知っていた。
だけど知らないフリをして、晋ちゃんの勘違いも否定しないで利用した。
それは心が手に入らないなら体だけでもとか、そういうんじゃなくて、一緒にいればいつか俺のことを好きになってくれるんじゃないかっていう
淡い、期待。
「ふ…土っ…方ぁ…」
でも晋ちゃんの口からその名前が出る度、そんなことはないんだと思い知らされる。
『俺を土方だと思っていいからさ。』
そう言ったのは、俺なのに。
だから晋ちゃんは目隠しをして“土方”として俺を感じる。
俺はただの“代わり”。
前、晋ちゃんは俺に言った。
『お前と土方は似てるんだよ。』って。
似ているのに、俺じゃダメなの?
ねぇ?
…こんなことをしても、お互い心が満たされないのはわかっている。
痛いだけなのは知っている。
だけど、欲しいんだ。
こんな形でも、君と繋がっている理由が――
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