連載

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キーンコーンと廊下を歩く俺の耳にチャイムの音が入ってくる。

学校が始まる、始業のチャイム、ではなくて授業開始を知らせるチャイムだ。

4時間目が始まるくらいか?

なんにせよ特に珍しいことでもないのでゆっくりとした足取りで教室に向かった。

各教室の横を通るときちらちらと視線を感じたが、授業中に廊下を歩いていれば存外目立つものなので気にしない。

3Zの教室を開いたときもみんなの視線を浴びるかと思った、の、だが、



そんなことはなく。


がらんとしたそこに生徒たちの姿はなかった。

扉を閉め、自分の席に鞄を置きながら俺は同じ空間にいるもう一人の存在に気がつく。


その瞬間、心拍数が上がる。


日の光を浴びてきらめく銀髪。

物音一つ発てず窓の外、何処か遠くを見つめる瞳。



しーんとした室内に…今俺たちは二人きり。


これはチャンスかもしれない。

会話、できるかも。



「ぎ、ぎん、ぱち」


久しぶりに口にするその名前。

声が震える。


「…ぎんぱち」


もう一度呼ぶとゆっくりと振り向いて俺を視界に入れた。



「なんで、みんないないんだ?」


ああ、喋り方がぎこちなくなっていないだろうか。

手の平にはうっすらと、汗。


「今、体育だから」

「そっ、か」


あ、会話終わっちゃった。

どうしよう、せっかくのチャンスなのに。

なにか言わないと。

でも思考は空回りするばかりで。

俺ってこんなに話し下手だったか?

何も浮かばない。

もうなんか、泣きたい…






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