連載
□11
2ページ/2ページ
やはりさっきの音は高杉だったようで、一時間目の後彼の席を見るといなくなっていた。
二時間目、三時間目、四時間目もいなくて、昼休みも終わるという頃になってふらりと姿を現した。
だけど俺はあんなことをしてしまったわけだし、銀八とのこともあるので話しかけるなんて出来ない。
謝るはずだったのだが時間が開いてしまうとどんどん謝りにくくなってしまい、タイミングを失ってしまったのだ。
ガラリ
授業が始まるチャイムより少し遅れてやって来たのはあの銀髪だった。
「先生授業遅刻です」
「細けェことは気にしないの。でっかい大人になれねぇぞ」
気怠そうな目が俺のさらに後ろを見て、微笑んだ気がした。
ああ、そういうことか。
大好きな彼氏だもんな。
そいつの授業だけは受けるよな。
一人納得してノートを開く。
黒板に板書されていくへにゃりとした文字を見ながら、なんであいつなんだろうと思った。
なんであんないい加減な奴なんだろうと。
それなのに勝てる気がしないことにいっそういらついて。
後ろ姿を睨みつけた。
「土方…」
つんつんと肩を突かれて振り向く。
呼んだのは高杉で。
「消しゴム貸して」
隣の席の奴も前の席の奴もいるのに俺を頼ってくれたという些細なことが嬉しかったが、それ以上にいらついていた俺はめんどうくさそうにぶっきらぼうな渡し方をしてしまった。
返されるときも高杉のありがとうという言葉に反応一つせず機械的に受け取っただけで。
高杉にこんな態度を取るのは初めだった。
高杉も俺の態度に戸惑っていたようだった。
.