緋色小説1

□想い、なきにしもあらず
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ごめんね。ごめん。嫌いなわけじゃないの。

だけどね。どうしても私にはこの人しかいない。


想い、なきにしもあらず



『好きだ』

拓磨にそう言われたのは数日前。

突然の一言。私には彼氏がいた。

真弘先輩。

拓磨にとって一緒に戦った仲間で、小さい頃からの友達で

でも…告白された。



拓磨に気持ちがなかったわけではない。

同じ教室にいて 拓磨に励まされたことはたくさんあった。

嫌いなんかじゃない。むしろ好き。

想いが少しもないわけじゃないの。


「おい!珠紀!おっせーぞ!」

校門から少し離れたところから真弘が珠紀の名前を呼ぶ。

「…真弘先輩…」

思わずかけよってぎゅっと腕をにぎってしまった。

「!?ど…どー…したんだよ…」

好きなのは真弘先輩。

恋愛感情をもってるのも真弘先輩。

でも拓磨にも少しもないわけじゃないの。

こんな私を貴方は軽いと怒鳴りますか…?



「…フれよ」

「え…」

ぽそりと耳元で真弘が呟く。

珠紀は状況が飲み込めず口を開いていた。

「オマエが拓磨に惚れたっつーなら…潔く俺をフれ」

力なく笑った真弘の笑顔はあまりにも切なく。

見るだけで胸がはりさけそうで。


「そんなわけじゃないです……っ」

真弘先輩が好きだ。

それは一寸の曇りもない。

言い切れる。胸をはっていえる。

「じゃあ…拓磨をちゃんと振ってやれ」

真弘にいつものようなふざけた雰囲気はまったくなく

少し怖いような感じもした。

でも結局それも拓磨を思ってのことだろう。


「アイツがオマエを好きって言ったのも嘘なわけじゃないんだ」

「……−はいー…っ」

好きになってくれてありがとう。

伝えてくれてありがとう。

けどごめんなさい。

貴方のものにはなれないの。

どうしても、1番なのはこの人だけ。


                                           fin

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