波瀾万丈

□豪放磊落
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お手伝いダメ、絶対!
とナミから言い渡され、ついでにクルーにも伝えられたせいか、誰かの顔を出せば手伝いのての字も言い出してないのに皆に大慌てで追い出されるという(ウソップなんか半泣きで『しばらく手伝うものなんかねーからな!』と何度も繰り返され作業場から追い出された。酷い)、なにそれ軽くいじめじゃね?
という扱いを受けていたりする。

手伝いと言えば着いてくると思ったのか何なのか、空気読めない船長が『***!昼寝手伝ってくれ!』と満面の笑顔で近寄ってきたので思いっきりスルーしてみた。
多分というか絶対にクルー全員にお手伝い禁止令が出ているに違いない。

だからこそこっそりとやれたらいいのにとか思っていたりするのに、ルフィ、マジ空気読め!
はーっと盛大な溜息をつきながらぐてんっと身体の力を抜く。

「―――やることがない」

サニー号の一番後ろの後ろ。
船尾から足を投げ出して、柵へと顎を乗せる。
青い海にはサニー号の進行によって出来た白い波が、まるでしっぽのような軌跡を作っている。
ずーっと続くその白い線を見つめていると、くあ、とひとつ欠伸が出た。

こんなとこ見つかれば『眠くなるのは身体が疲れてるショーコだ!』と優秀で心配性な船医に病人として扱われそうなので連続して出そうな欠伸を噛み殺せば、

「落ちんなよ」

「落ちないっての」

背後からかかった声に、不貞腐れ気味にそう叫び返した。
船尾が定位置となってしまっているといれば、方向音痴を認めようともしない緑頭の剣士である。
他のメンバーのところに行けば手伝いなんてさせるものかとばかりに追い出されるのでいる場所がない。

いや、ラウンジとか男部屋とかそういった場所はあるけれど、あちこちで皆が何かをしている時に誰もいない部屋でぼへーっとしているのもなんだか落ち着かない。
自分の出来ることをするんだ、と決めた矢先だったから尚更。
なんだか、………いらない子であることを思い知らされるというか。

いや、まぁ、バタバタして倒れて迷惑かけたしぶっちゃけいらない子なのは事実なんだけれども。
こんなに弱かったかなぁ?
健康優良児だったような気もするんだけど。

はーっと無意識に出てしまった重苦しい溜息が潮風に混じる。
真っ青な空と真っ青な海。
サニー号の軌跡を白く映し出す波と飛び交う海鳥。

「海が青くてキラキラしててきれーだなー」

なんとも心和む景色なのに、心の中はどんよりとした暗雲が立ち込めたままだ。
自然と込み上げてくる溜息を吐き出しながら目蓋を閉じる。
目蓋の裏に海面に反射する太陽の光を感じながら、船尾の柵に凭れるようにさらに力を抜いたのだった。






*
*
*





―――ゴリ。


痛い!
側頭部から走り抜けた激痛に意識が急浮上する。

ゴリってなんだ、ゴリって!
めちゃくちゃ痛いんだけど!?

いつの間にか寝てしまったらしいと気づいたが、今はそんなことよりも急に襲われた痛みだった。
まさかナミにまた何かされてんじゃ、と恐る恐る開いた目蓋の先。
映ったのは―――

「……?」

真っ直ぐに伸びた手。
その先に節ばった指先が見える。

えー…っと?
なんだ?この状況。

自分の首は横を向いているらしい。
ということでぐるりと首を正面へと据える。
腕は消え、見えたのは青空だった。
うん、なんだ、多分、甲板で寝てる状態……だよ、な?これ?
ていうか、なんか今度は側頭部から後頭部が痛いんだけど。
こう、丸太というか石の棒を差し入れられているというか。
目を開いた先に腕が見えたけど、それじゃないよな?



………。




丸太だよな?
石の棒だよな?
そうだよな?
そうじゃなきゃこの頭の痛みは説明できないよ、な?
きっと寝ぼけて違うのみちゃったんだ…よな?

生身の腕なんてまさかハハハハ、と恐る恐る今度は首を反対へと向けて、高速で正面へと戻した。
その度にゴリッゴリッと物凄い痛みがしたが、痛みよりも衝撃の方が強かった。




ゾロだ。




間近にゾロがいる。
ていうか、なんか―――腕 枕 さ れ て る っ ぽ い ん で す け ど 。
ドバっと一気に嫌な汗が吹き出るのを感じた。
いやいやいや、なんで!
どうして!
どうなってんの!
ていうかそもそも腕枕ってのは分からないけど、ゴリってのもねーよ!
激痛だったよ!
凶器じゃねーか!
いまだに物凄く硬い感触を伝えてくる枕じゃねーだろうという腕の感触にヒィィィと心の中で悲鳴をあげた。



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