NO WHERE.

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ずっと、ずっと、ずっと―――
この城で、怪我をした状態で、目が覚めてから魚の小骨が喉に引っかかっているかのように絶えず感じていたもの。
それは、『違和感』だ。






ポーションも知らない。
ミッドガルも神羅も知らない―――そんなことがあるのか、と何度もそう思った。
それを深く考えようともせず蓋をしていたのは、自分だ。

認めなくなかった。

自分の知る世界とはズレているのではないかという違和感を、認めたくは、なかった。
けれど、街に降りて突きつけられたのは現実で。
ギルではない通貨、ポーションのない雑貨屋、海を中心とした見た事もないマップ。

―――ここは自分が『当たり前』であるとするものが当たり前ではない。

愕然とした。
今まであえて避けてきたことを突きつけられ、即座に受け入れることなど出来るはずがない。
もし、
もしも、
いいや、そんなことはない、
そんなこと、現実に起こるはずがない、
いや、でも、もしも、
もしも、もしも、もしも………、
想像して否定して、また思いに耽る。




もし、
もしも、
もしも、
距離などではなく―――何もかも全てが、否、世界自体が違っていたとしたら?




ポーションなんて聞いたことも見たこともないだろう。
神羅も存在しないだろう。
ここは、自分の居た世界とは全く異なった世界となるのではないか、と。

「―――ドクトリーヌ」

「なんだい、死にそうな顔して」

深夜にも近い時間。
ノックのせずに扉を開いたというのに驚きの表情ひとつなくソファーに座り酒ビンを煽る女性。
戸口近くでその豪気に構えた姿を前にゆっくりと口を開いた。

「俺は、この世界の人間じゃない…らしい」

認めたくはなかった。
だから『らしい』と逃げた、のに―――

「そうだろうね」

誰よりも厳しく、真っ直ぐで力強い女性から当たり前に肯定されて、
驚けばいいのか、悲しめばいいのか分からずに細い息を吐き出すしか道は残されていなかった。





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