NO WHERE.

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人生は変化に富んだものだというか、まさに今の自分の状態がそれであるだろう。
友人に裏切られ、世界を跨ぎ、そして今友人を見送った。
自分の命を取り留めてくれた友を。

『ヒルルクっていうんだ!すげーんだぞ!』

いつか絶対世界一の医者になるのだ、と毛布にくるまりながらそんな話を聞いた。
暖炉の炎を見ながらの夜更かしを何度繰り返しただろう。

城のてっぺんではためく髑髏と桜への愛着と、そして医療の高みを目指す強い信念。
聞こえるのは互いの声と部屋の窓を叩く雪風。

揺れる炎の前で毛布に包まっていれば、まるでたった二人で世界に取り残されてしまったのではないかと錯覚するほどではあったが、チョッパーの輝く瞳の中に希望があった。




別れはいつも突然だ。




あっという間にあの小さなトナカイはこの地から飛び立っていってしまった。
どんな過去を持っていようが、どんな未来が待っていようが、そんなものは些細な事でしかない。
心が望むものを理性で止めることは出来ない。
誰が何を言って引きとめようとしても、頭が警鐘を鳴らしたとしても、心が望むものを拒むことなど出来やしないのだから。




きっと、海賊がこの島に来た時から―――チョッパーの運命は決まっていたのだろう。




見上げた空からはいつも通り、静かに、滑らかに雪が降り続いていた。
吐き出す息は白く濁り、凍てついた空気が肌を刺す。
白に染まった世界。
まるで全てものもから遮断されかのような光景の中で、心の中に広がる静かな感情のまま、

「頑張れ」

届くことのないエールを小さく送る。
あの小さなトナカイに。
感謝してもしきれない。
誰よりも優しく、強く、逞しく、しなやかな心を持つ存在に。

選択を積み重ねる度に、人生の形は変わっていく。
自分の選択次第で新しい自分となり歩んでいける。
きっとチョッパーは彼なりにこの海の世界を受け入れ生き続けていくのだろう。




2013.8.4

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