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くろねこのなは

 空を見上げた。
 今日は少し薄暗い。
 雨は降りそうにないようなので、お気に入りのブーツを履いて、散歩に出た。
 人気の少ない河原をのんびりと歩いていると、「ニャァ」とか細い猫の声が聞こえた。おどおどと姿を現したのは、小さな黒猫だった。
「おいで、悪いことはしないから」
 わたしの言った言葉を理解したのか、黒猫はゆっくりとわたしに近寄り、胸に飛び込んできた。「ん、いい子だね」

 帰宅し、軽く昼食を取る。黒猫には水と以前友人に押し付けられた猫缶。
「……おとなしい子だね」
 彼にそっくりだ。
「ニャ」
「このままうちの子になっちゃう?」
 でも人見知りをしないところは全然似てない。無垢な瞳をわたしに向けて、黒猫は返事をする。
「ニャ」
 黒猫は足に擦り寄って幸せそうに目を細めた。……彼もこの子を見習ってくれればいいのに。

「ん、決めた。君の名前は『ニコ』。ニコに決定」
「ニャッ」
 黒猫のニコを膝にのせ、鼻先に軽くキスを落とす。普段奥手な彼にはこんなふうには接することはできないので、なんというか、欲求不満解消?
「……ニコライに会いたいなぁ」
 今頃は無事帰郷していることだろう。
 いつ帰ってくるかもわからない恋人のいる方角を見つめながら、黒猫のニコを抱きしめた。
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