捧げ物
□rain drop
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今よりずっと小さい頃、迷子になった俺の手を引いてくれた温かな手は、誰のものだったっけ。雨風に晒されて冷たくなった手をきゅっと握り締めると、ジェイドはいつもそんな疑問が頭をよぎる。
師匠であるブロッケンJr.に出会うよりも、ずっとずっと昔のこと。彼に優しくしてくれたおじさんとおばさんに引き取られてからすぐに、ジェイドは迷子になった。そうして誰かに出会い、無事に家に戻ることができた。ただ、その“誰か”は未だに思い出せないでいる。
大きくて、柔らかな面影。差し伸べてくれたその手はとても温かくて、俺はすっかり安心してしまった。
（あの人に、ちゃんとお礼も言っていないな）
「雨、止まないな」
あの日も雨が降っていた。嫌いだった雨も、あの日以来、ちょっぴり好きになった。“あの人”は確か、雨が好きだと言っていたから。
パラパラと小気味のいい音をたてて葉を濡らす雨粒たち。ジェイドは目を瞑る。きっと今なら、あの日のことを思い出せるような気がした。